創世記19:12-26 『振り返ってはならない』 2006/07/16 松田健太郎牧師

創世記 19:12~26
19:12 ふたりはロトに言った。「ほかにあなたの身内の者がここにいますか。あなたの婿やあなたの息子、娘、あるいはこの町にいるあなたの身内の者をみな、この場所から連れ出しなさい。
19:13 わたしたちはこの場所を滅ぼそうとしているからです。彼らに対する叫びが主の前で大きくなったので、主はこの町を滅ぼすために、わたしたちを遣わされたのです。」
19:14 そこでロトは出て行き、娘たちをめとった婿たちに告げて言った。「立ってこの場所から出て行きなさい。主がこの町を滅ぼそうとしておられるから。」しかし、彼の婿たちには、それは冗談のように思われた。
19:15 夜が明けるころ、御使いたちはロトを促して言った。「さあ立って、あなたの妻と、ここにいるふたりの娘たちを連れて行きなさい。さもないと、あなたはこの町の咎のために滅ぼし尽くされてしまおう。」
19:16 しかし彼はためらっていた。すると、その人たちは彼の手と彼の妻の手と、ふたりの娘の手をつかんだ。――主の彼に対するあわれみによる。そして彼らを連れ出し、町の外に置いた。
19:17 彼らを外のほうに連れ出したとき、そのひとりは言った。「いのちがけで逃げなさい。うしろを振り返ってはいけない。この低地のどこででも立ち止まってはならない。山に逃げなさい。さもないと滅ぼされてしまう。」
19:18 ロトは彼らに言った。「主よ。どうか、そんなことになりませんように。
19:19 ご覧ください。このしもべはあなたの心にかない、あなたは私のいのちを救って大きな恵みを与えてくださいました。しかし、私は、山に逃げることができません。わざわいが追いついて、たぶん私は死ぬでしょう。
19:20 ご覧ください。あそこの町は、のがれるのに近いのです。しかもあんなに小さいのです。どうか、あそこに逃げさせてください。あんなに小さいではありませんか。私のいのちを生かしてください。」
19:21 その人は彼に言った。「よろしい。わたしはこのことでも、あなたの願いを入れ、あなたの言うその町を滅ぼすまい。
19:22 急いでそこへのがれなさい。あなたがあそこにはいるまでは、わたしは何もできないから。」それゆえ、その町の名はツォアルと呼ばれた。
19:23 太陽が地上に上ったころ、ロトはツォアルに着いた。
19:24 そのとき、主はソドムとゴモラの上に、硫黄の火を天の主のところから降らせ、
19:25 これらの町々と低地全体と、その町々の住民と、その地の植物をみな滅ぼされた。
19:26 ロトのうしろにいた彼の妻は、振り返ったので、塩の柱になってしまった。

7月13日木曜日に、ベスと奈緒美はアメリカに旅立ちました。
実はその前日の水曜日に、奈緒美が40度近い熱をだしたのでした。
溶連菌という細菌に感染されたためでした。
アメリカまでは12時間くらい飛行機に乗りっぱなしの状態ですから、その前日に高熱を出したのはすごく心配で、急きょ医者に連れて行くことにしました。
医師の診断をうけたところ、熱自体は24時間くらいでおさまるし、抗生物質を投与すればそれほど深刻な病気ではないということで様子をみることにし、当日熱がある程度おさまったことを確認して成田空港まで見送りに行ったのでした。
子供はやはり細菌に感染しやすいですね。
体力的な事もあるのでしょうし、何でも口に入れてしまうことも大きな原因なのでしょう。

さて、私達は細菌以上に感染しやすいものがあることを知っています。
それは、罪というものです。
私達は生まれたときから原罪というものを持っているため神様から引き離されているのですが、その罪とは別に、行いとしての罪は大変な感染力を持っています。

『朱に交われば赤く染まる』ということわざがありますが、善い事は中々広がっていかないのに、悪い週間は実に簡単に広がっていくものです。
皆さんも、悪口や噂話のようなものがいかに簡単に広がっていくものかということに驚いた事があるのではないでしょうか?
また、怒りや苛立ちのようなネガティブな感情も、愛が伝わる何倍ものスピードとパワーをもって、人々に感染していくものです。

今日はいよいよソドムとゴモラが滅んでいくのを目の当たりにするのですが、私達がこのような悲劇を耳にしなくて済むのならどれほどいいだろうかと思います。
しかし、罪に影響されやすいという弱さは私達誰もがもっている弱点でもあります。
私達はその弱さを自覚しながら、共にロトの行動から学んでいきましょう。

① 罪に染まるロト
先週のメッセージでアブラハムと会い、ソドムとゴモラに対する執り成しを聞き入れた神様とみ使いたちは、今度はロトの前に現れました。
もしソドムに10人の正しい人がいたら、その10人のためにソドムを滅ぼさないと約束した神様でしたが、この町の人々は訪れた神の御使いたちに襲い掛かり、暴行を働こうとするような性的にも道徳的にも乱れきった状態です。
もう救いようも無い状態なのは明確でした。

旅人が襲われてひどい眼に合わされるのを止めようとした、アブラハムの甥のロトでさえ、町の人々が旅人たちを連れ去ろうとするのを食い止めるためとはいえ、自分の娘の貞操を犠牲にしようとする始末です。

ソドムをケドルラオメルから救った英雄アブラハムの甥として、ロトは大きな尊敬を受け、持ち上げられてきたはずでしたが、ロトがソドムに住み着いてから20年以上の月日が経過しようとしていました。
ロトはソドムの人々から多くの影響を受け、正しい価値基準を失ってしまっていたのです。

私達がクリスチャンになったあと、救われたからもう何をしてもいいというのではなく、教会に来て礼拝し、他のクリスチャンとも交わり続ける必要があるのはこの様な理由からです。
私達だけでは正しい価値観をすぐに忘れてしまい、信仰を失いやすい罪人です。
圧倒的多数であるこの世的な価値観の中で生活していれば、すぐに影響を受け、流されてしまうのです。

皆さんは、普段どのような環境下にご自分を置いていらっしゃるでしょうか?
私達がこの世で生きて、生活している以上、罪の世界から完全に身を離すことはできませんし、もちろん世捨て人になればいいということではありません。
しかしだからこそ、私達は可能な限り神様との時間を過ごし、主にある家族である他のクリスチャンとの交わりの中に自分の身を置いて、自分の信仰を整える時間を必要とするのです。

② 振り返ってはならない
さて、御使いたちはロトにソドムとゴモラを滅ぼす事を伝え、家族とともに一刻も早くこの場から立ち去ることを命じられます。

19:12 ふたりはロトに言った。「ほかにあなたの身内の者がここにいますか。あなたの婿やあなたの息子、娘、あるいはこの町にいるあなたの身内の者をみな、この場所から連れ出しなさい。
19:13 わたしたちはこの場所を滅ぼそうとしているからです。彼らに対する叫びが主の前で大きくなったので、主はこの町を滅ぼすために、わたしたちを遣わされたのです。」
19:14 そこでロトは出て行き、娘たちをめとった婿たちに告げて言った。「立ってこの場所から出て行きなさい。主がこの町を滅ぼそうとしておられるから。」しかし、彼の婿たちには、それは冗談のように思われた。

皆さんはポンペイという町の事を聞いたことがあるでしょうか?
紀元79年の夏、ヴェスヴィオ火山の噴火によって瞬時に滅び、火山灰の底に埋もってしまったローマの町です。
18世紀から発掘が開始され、固まった火山灰の中で死体が腐敗してできた空洞に石膏を流し込んでできた当時の死者の姿で有名になりました。
多くの人々が噴火の直前まで気がつかず、日常生活のままで生き埋めになったのです。
しかし、噴火の前には地鳴りや地響きなど、数週間に及んで予兆が続き、彼らはたくさんの地震を経験していたのです。
そんな予兆があったにもかかわらず、人々はそれが火山の噴火の予兆だとは思いませんでした。
自分たちにそんな災難が訪れるはずが無い。そう信じていたのです。

ロトからソドムの滅亡を聞いた婿たちも、この豊かでケドルラオメルからの侵略からも生き残ったソドムがこれから滅びようとしているなど、思いもよりませんでした。

そして、「お義父さん、そんなはずがあるわけないじゃないですか! 天使が現れたなんて、酔って夢でも見ていたんじゃないですか?」
そんな風に言われてみると、ロトの貧弱な信仰は途端に萎みだし、婿たちの言うとおりに、悪い冗談に巻き込まれているような気がしてきてしまうのでした。

19:15 夜が明けるころ、御使いたちはロトを促して言った。「さあ立って、あなたの妻と、ここにいるふたりの娘たちを連れて行きなさい。さもないと、あなたはこの町の咎のために滅ぼし尽くされてしまおう。」
19:16 しかし彼はためらっていた。すると、その人たちは彼の手と彼の妻の手と、ふたりの娘の手をつかんだ。――主の彼に対するあわれみによる。そして彼らを連れ出し、町の外に置いた。

しかしそれでも神様は、不信仰のためにためらうロトを見殺しにすることなく、主のあわれみによって、町の外に連れ出されました。

19:17 彼らを外のほうに連れ出したとき、そのひとりは言った。「いのちがけで逃げなさい。うしろを振り返ってはいけない。この低地のどこででも立ち止まってはならない。山に逃げなさい。さもないと滅ぼされてしまう。」
19:18 ロトは彼らに言った。「主よ。どうか、そんなことになりませんように。
19:19 ご覧ください。このしもべはあなたの心にかない、あなたは私のいのちを救って大きな恵みを与えてくださいました。しかし、私は、山に逃げることができません。わざわいが追いついて、たぶん私は死ぬでしょう。
19:20 ご覧ください。あそこの町は、のがれるのに近いのです。しかもあんなに小さいのです。どうか、あそこに逃げさせてください。あんなに小さいではありませんか。私のいのちを生かしてください。」

それでもロトは、山の上まで逃げろと言われる御使いに対して「あんな山までは行けそうにないから、小さな町のあるこっちにしてくれ」と注文をつけるのです。
山の上では行くのが大変だし、今までやってきた牧畜という経験が活かせず、自分の思い通りの生活ができないと考えたのかもしれません。
この期に及んで、ロトは神様を信用しきることができなかったのでした。

私達も神様の命令に注文をつけ、言い訳をし、わがままを並べ立てる事はないでしょうか?
それは不信仰以外のなにものでもありません。
しかし、それでも主は忍耐強くそのわがままに耳を傾け、私達を取り扱って下さるのです。

このようにして、ロトたちは危険地帯から逃げ出す事ができました。
すると日が昇り、神様の裁きが始まったのです。

19:24 そのとき、主はソドムとゴモラの上に、硫黄の火を天の主のところから降らせ、
19:25 これらの町々と低地全体と、その町々の住民と、その地の植物をみな滅ぼされた。
19:26 ロトのうしろにいた彼の妻は、振り返ったので、塩の柱になってしまった。

「振り返ってはならない」という御使いの言葉を軽んじ、好奇心に勝つことができなかったロトの妻は、振り返ったために塩の柱になってしまいました。
最期の時、おそらく彼女の心にあったのは、生まれ育ったソドムの町並み、自分の家、置いてきた財産、友人たちへの未練だったことでしょう。
死海の片隅には今も、ロトの妻のなりの果てだと伝えられている塩の柱が立っているそうです。

天の御国に入るためには、この世か神様かのどちらかを選択しなければなりません。
私たちがこの世の事をいつまでも引きずり、後戻りするなら、天の御国にたどり着くことなく最期の時を迎えてしまうかもしれません。
イエス様はこのように言いました。

ルカ 17:31 その日には、屋上にいる者は家に家財があっても、取り出しに降りてはいけません。同じように、畑にいる者も家に帰ってはいけません。
17:32 ロトの妻を思い出しなさい。
17:33 自分のいのちを救おうと努める者はそれを失い、それを失う者はいのちを保ちます。

願わくは少しでも多くの方々が、最期の時を向かえる前に信仰を持ち、天の御国に入ることができるように祈ります。

③ 地の塩、世の光となる
残念なことですが、ソドムの滅亡によって罪の根が絶たれたわけではありませんでした。
この後、残されたロトの娘たちがロトとの間に子供を設け、近親相姦によって子供が生まれるという不名誉な自体が起こってきます。
ロトと娘たちと罪の間に生まれた子供たちは、どんどん増え広がり、やがてアモン人、モアブ人という民族へと発展していきます。
そしてアブラハムの民族がイスラエルという民族を形成したとき、アモン人、モアブ人は性的誘惑によってイスラエルを堕落させていくことになるのです。
少しでも根が残っていれば必ずそこから増え広がるカビのような生命力。
これが罪というものの恐ろしさです。

滅ぼしつくすことができず、恐ろしい感染力をもつこの罪というものに、私たちはどのように対抗していくことができるのでしょうか?
旧約聖書の時代には、滅ぼされることでしか罪の感染を止めることはできませんでした。
しかし、イエス様を知っている今の時代の私たちには、この当時の人々が持っていなかったものを手にしています。
それは聖霊、御霊です。

ガラテヤ 5:16 私は言います。御霊によって歩みなさい。そうすれば、決して肉の欲望を満足させるようなことはありません。
5:17 なぜなら、肉の願うことは御霊に逆らい、御霊は肉に逆らうからです。この二つは互いに対立していて、そのためあなたがたは、自分のしたいと思うことをすることができないのです。

私たちはどれだけ人々を愛し、親切にし、善いものを伝えようとしても、その影響力は弱々しくて、罪の力に負けてしまうかもしれません。
あるいはどれだけ伝道して神様のことを伝えても、この世の力には勝てないかもしれません。
しかしそこに神様の力があるなら、私たちはどのような罪の力も恐れる必要がありません。
御霊によって歩むとは、私たちの内に神様が働いてくださることを意味しています。
私たちが御霊によって生きるとき、私たちは真に地の塩、世の光となって、罪に打ち勝つことができるのです。

私たちに勝利する力があるのではありません。
しかし、私たちの内にいてくださるイエス様が、すでに勝利者なのだということを覚え、希望をもって神様の恵みの元に生きていきましょう。

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