ダニエル8:1-14 『 ダニエル8 雄羊と雄やぎ 』 2014/07/13 松田健太郎牧師

ダニエル8:1~14
8:1 ベルシャツァル王の治世の第三年、初めに私に幻が現れて後、私、ダニエルにまた、一つの幻が現れた。
8:2 私は一つの幻を見たが、見ていると、私がエラム州にあるシュシャンの城にいた。なお幻を見ていると、私はウライ川のほとりにいた。
8:3 私が目を上げて見ると、なんと一頭の雄羊が川岸に立っていた。それには二本の角があって、この二本の角は長かったが、一つはほかの角よりも長かった。その長いほうは、あとで出て来たのであった。
8:4 私はその雄羊が、西や、北や、南のほうへ突き進んでいるのを見た。どんな獣もそれに立ち向かうことができず、また、その手から救い出すことのできるものもいなかった。それは思いのままにふるまって、高ぶっていた。
8:5 私が注意して見ていると、見よ、一頭の雄やぎが、地には触れずに、全土を飛び回って、西からやって来た。その雄やぎには、目と目の間に、著しく目だつ一本の角があった。8:6 この雄やぎは、川岸に立っているのを私が見たあの二本の角を持つ雄羊に向かって来て、勢い激しく、これに走り寄った。
8:7 見ていると、これは雄羊に近づき、怒り狂って、この雄羊を打ち殺し、その二本の角をへし折ったが、雄羊には、これに立ち向かう力がなかった。雄やぎは雄羊を地に打ち倒し、踏みにじった。雄羊を雄やぎの手から救い出すものは、いなかった。
8:8 この雄やぎは、非常に高ぶったが、その強くなったときに、あの大きな角が折れた。そしてその代わりに、天の四方に向かって、著しく目だつ四本の角が生え出た。
8:9 そのうちの一本の角から、また一本の小さな角が芽を出して、南と、東と、麗しい国とに向かって、非常に大きくなっていった。
8:10 それは大きくなって、天の軍勢に達し、星の軍勢のうちの幾つかを地に落として、これを踏みにじり、
8:11 軍勢の長にまでのし上がった。それによって、常供のささげ物は取り上げられ、その聖所の基はくつがえされる。
8:12 軍勢は渡され、常供のささげ物に代えてそむきの罪がささげられた。その角は真理を地に投げ捨て、ほしいままにふるまって、それを成し遂げた。
8:13 私は、ひとりの聖なる者が語っているのを聞いた。すると、もうひとりの聖なる者が、その語っている者に言った。「常供のささげ物や、あの荒らす者のするそむきの罪、および、聖所と軍勢が踏みにじられるという幻は、いつまでのことだろう。」
8:14 すると彼は答えて言った。「二千三百の夕と朝が過ぎるまで。そのとき聖所はその権利を取り戻す。」 

先週から引き続き、ダニエルが見た幻、黙示についてお話していきたいと思います。
黙示と言うのは、神様が与える啓示でしたね。
ちょっと読んだだけではとても理解しがたくて、とにかく難しいイメージがありますが、コツさえつかめれば私たちにもある程度読み解くことができます。

先週読んだ7章では、海から4つの獣が出てきて、それぞれがイスラエルを苦しめる事になる王国を表していました。
翼の生えた獅子のような獣がバビロン帝国、熊のような獣がメディア・ペルシャ帝国、4つの翼と4つの頭をもったひょうのような獣がギリシア帝国、そして10の角を持つ獣がローマ帝国と終わりの時代を表しています。

ここで示されていたのは、迫害は必ず起こり、永遠と思えるような時ではあるけれど、いつまでも続くものではないというメッセージが伝えられていましたね。

今日の箇所で描かれている幻には、雄羊と雄やぎという違う動物が出てきますが、それは一体何を表したものなのでしょうか?
共に読み解きながら、神様からのメッセージを受け止めていきましょう。

① 雄羊
4つの獣の幻を見てから2年後、ダニエルは再び幻を見たのです。
その幻で、ダニエルはシュシャンという町の城にいました。
シュシャンというのはペルシャの首都で、後にネヘミヤやエステルが住んでいた都市としても登場します。
ダニエルがこの幻を見たのは、まだ彼がバビロン帝国にいた頃ですが、これからバビロンが滅ぼされ、ペルシャに住むことになるという事を幻の中で知らされていたわけです。

さて、その幻の中でダニエルは、ウライ川の川岸に二本の角がある雄羊が立っているのを見ました。
二本の角の一方が長く、長い方の角が後から生えてきた角だという事がわかりました。
雄羊は西、北、南と突き進み、どんな獣も立ち向かう事ができず、その思いが高ぶっているのがわかります。
そこへ、西から1頭の雄やぎが現われました。
その雄やぎは地に触れずに全土を飛び回りますが、怒り狂って雄羊を殺し、強大になっていきました。
雄やぎには、目と目の間に著しく目立つ一本の角がありました。
しかし雄やぎが高ぶると、その角は折れてしまい、後から4本の角が生えてきました。
その内の一本の角から、さらにまた一本の小さな角が芽を出して、南と東と麗しい国とに向かって非常に大きくなり、天の軍勢まで達します。

 

そして、星の軍勢のいくつかは地に落とされ、角は天の軍勢の長にまでの仕上がり、常共のささげものは取り上げられ、それに代わって背きの罪が捧げられるというのです。
荒らす者と呼ばれるこの角による無法は、二千と三百の夕と朝が過ぎるまで続くという言葉と共に、この幻は終わっています。

ここに登場する雄羊と雄やぎも、7章に出てきた4頭の獣と同じように王国を表しています。
今までと違うのは、その動物がどの国を表しているかという事を、天使ガブリエルが教えてくれている事です。

ダニエル 8:20 あなたが見た雄羊の持つあの二本の角は、メディヤとペルシヤの王である。8:21 毛深い雄やぎはギリシヤの王であって、その目と目の間にある大きな角は、その第一の王である。
8:22 その角が折れて、代わりに四本の角が生えたが、それは、その国から四つの国が起こることである。しかし、第一の王のような勢力はない。

メディア・ペルシャ帝国とギリシア帝国は、7章に出てきた第2と第3の獣と同じです。
メディア・ペルシャに関しては、ここではあまり重要ではないのと、エズラ書、ネヘミヤ書を学ぶときにもう少しお話しすることになると思うので、ここでは雄やぎの方に焦点を当てて学んでいきたいと思います。

② 小さな角
さて、ダニエルがこの幻を見たのは、バビロン帝国がまだ力を持っている時代です。
メディア・ペルシャ帝国がどんどん大きくなってきたとはいえ、この頃のギリシアは、弱小国のひとつでしかありませんでした。
今から200年後、ラオスがアジアで一番大きな経済力をもっているでしょうと言うようなものです。
この時代に、メディア・ペルシャの次はギリシアが支配すると予想することができた人は、まずいなかったでしょう。
この黙示がまた、見事に200~300年後の時代のギリシアを描いているのです。

ここに出てくる、“目と目の間にある大きな角”とは、ギリシア帝国の創始者となった、アレクサンドロス大王です。
ヨセフスという、ユダヤ人の歴史家が書いたユダヤ古代誌の中では、アレクサンドロス大王がメディア・ペルシャ帝国と戦う直前にエルサレムを訪れ、ダニエル書のこの記事を教えられ、「これは自分の事だ」と言って喜んだと書かれています。

マケドニア王国の王だったアレクサンドロスは、ギリシアを攻め滅ぼすと、それを機会にどんどん近隣諸国を飲み込んでいき、その侵略の手を一気に伸ばしていきました。

しかしこのアレキサンドロスは、王となってからわずか10年で死んでしまうんです。
この一つの角が折れると、代わりに四本の角が生えました。
それは4つの王国を指していると言います。
これは国の名前が出てきませんが、おそらくはプトレマイオス朝エジプト、セレウコス朝シリア、さらにマケドニアとトラキヤをさしているだろうと想像できます。
重要なのは、その後に出てくる小さな角です。

 

4つの角のひとつから芽を出すと書かれています。
この角は、南と東と麗しい国に向かって大きくなっていきます。
ここで言われている麗しい国というのは、イスラエルの事です。
この小さな角は、シリアから出てくるアンティオコス・エピファネスの事だろうと言われているんです。

エピファネスというのは、神の顕現を表すギリシア語です。
つまり、アンティオコスは自分自身を神の化身だと名乗っているのです。
そして、ユダヤ人たちが安息日を守る事、割礼を施す事、律法の書を持つことを禁止し、それを破る人を処刑しました。
さらに、エルサレムにある神殿の調度品を略奪し、代わりにゼウスの祭壇を設け、ユダヤ人がもっとも汚れたものとする豚を生贄として捧げました。

まさに、聖書に言われている通りですね。

8:12 軍勢は渡され、常供のささげ物に代えてそむきの罪がささげられた。その角は真理を地に投げ捨て、ほしいままにふるまって、それを成し遂げた。
8:13 私は、ひとりの聖なる者が語っているのを聞いた。すると、もうひとりの聖なる者が、その語っている者に言った。「常供のささげ物や、あの荒らす者のするそむきの罪、および、聖所と軍勢が踏みにじられるという幻は、いつまでのことだろう。」

これが、実際にアンティオコス・エピファネスが出てくる何百年も前に書かれていてと言うのですから驚きです。
しかし、これはアンティオコス・エピファネスの事だけについて書かれているのではありません。
これは、終わりの時代の事について書かれた二重預言だからです。
ダニエル 8:26 先に告げられた夕と朝の幻、それは真実である。しかし、あなたはこの幻を秘めておけ。これはまだ、多くの日の後のことだから。」
アンティオコス・エピファネスは、終わりの時代に出てくる反キリストの型です。
終わりの時代に現れる反キリストがどのような人物なのか、アンティオコス・エピファネスがした行動を通して、明らかになるのです。

こうして、終わりの時代に起こることの一つ一つを聞いていると、なんだか怖くなってきてしまうかもしれません。
世界がどんどんそこに近づいている事も、私たちは肌で感じられるからなおさらです。

だから、この人物こそ反キリストなのではないかという推測も次々と起こっていきます。
ヒトラーや、サダム・フセイン、ローマ法王や、ジョージ・ブッシュ、バラク・オバマ。
また、イエス様の再臨に関しても、さまざまな憶測が増えていきます。

14節の「二千三百の夕と朝が過ぎるまで」という言葉からは、イエス様の再臨がいつあるかという事を推測する人たちまで起こりました。

8:14 すると彼は答えて言った。「二千三百の夕と朝が過ぎるまで。そのとき聖所はその権利を取り戻す。」

あるグループの人たちは、この数字から独自に計算をして、1843年10月22日にキリストは再臨すると主張しました。
また、すでに再臨していると言う人たちもたくさんいますね。
そういう人たちもまた、聖書の記述を通して、自分たちの言う事が正しいと主張しますから、注意が必要です。
いつそれが起こるかという事については、はっきりと知らされていない事、イエス様ご自身もそれは知らないと言っている事を忘れてはなりません。

その一方で、はっきり知らされている事もあるのです。
神様は、私たちが信仰を持ってこの世界で生きるという事が、全て楽で楽しいだけの人生ではないという事を教えてくれました。
この世界には私たちに反対する者が常にあり、私たちは激しい迫害も経験します。
しかし、それがいつまでも続くものではなく、いつか裁きの時が来て、全ての悪は打ち砕かれるという事もはっきりと教えてくれているのです。

ダニエル 8:25 彼は悪巧みによって欺きをその手で成功させ、心は高ぶり、不意に多くの人を滅ぼし、君の君に向かって立ち上がる。しかし、人手によらずに、彼は砕かれる。

ダニエル書には、彼が見た幻があと2回分書き記されています。
その幻の中でダニエルが見たもの、そしてダニエルにも解き明かす事ができなかったけれど、今の私たちは解き明かされているいくつかの事を、引き続き学んでいきたいと思います。
祈りましょう。

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