創世記14章 サレムの王メルキゼデク

目次

ケドルラオメル

ロトが住み着いたソドムの町でしたが、戦争が起こり、ロトはその戦いに巻き込まれてしまいます。

この戦いは、ケドルラオメル王に従っていたソドム、ゴモラなどの5つの国の王達が12年の支配の後、反逆を起こしたために起こった戦いです。
ケドルラオメルを始めとした4つの国は、5国を再び配下に置こうと戦争を起こします。

さて、この戦いに巻き込まれてしまったロトは、ケドルラオメルに財産を奪われます。
それを奪い返すために、アブラムが仲間を集めて戦いを挑むわけです。

僕たちも、戦わなければならない時があります。
それは、自分を守り、誰かを助けるための戦いです。

この戦いに備えてアブラムが招集したのは、318人のしもべ達でした。
同盟を組んだマムレ、エシュコル、アネルを合わせても大した人数ではなかったでしょう。
それでもアブラムは、敵から家族を守るために、そして甥であるロトを救出するために戦いました。

創世記 14:14 アブラムは、自分の親類の者が捕虜になったことを聞き、彼の家で生まれて訓練された者三百十八人を引き連れて、ダンまで追跡した。
14:15 夜、アブラムとそのしもべたちは分かれて彼らを攻め、彼らを打ち破り、ダマスコの北にあるホバまで追跡した。
14:16 そして、アブラムはすべての財産を取り戻し、親類のロトとその財産、それに女たちやほかの人々も取り戻した。

敵は、ケドルラオメルを始めとする4つの国の軍勢です。
人数はわかりませんが、これまで打ち破ってきた国々を考えれば大軍勢だったでしょう。
あっさり書かれていますが、人数差を考えればアブラムがケドルラオメルに勝つことなど不可能だったと思います。
これ程不利な戦いなのに勝利がもたらされたのは、これが神さまの戦いだったからです。

サレムの王メルキゼデク

さてロトを救出し、ケドルラオメルが奪っていった財産を奪い返し、アブラムはソドムへと戻ってきました。
ソドムに凱旋するアブラム達を出迎えたのは、ソドムの王でした。
しかし、それをさえぎるように、シャレムの王メルキゼデクという人が突然姿を現します。

創世記 14:18 また、サレムの王メルキゼデクは、パンとぶどう酒を持って来た。彼はいと高き神の祭司であった。
14:19 彼はアブラムを祝福して言った。「アブラムに祝福あれ。いと高き神、天と地を造られた方より。
14:20 いと高き神に誉れあれ。あなたの敵をあなたの手に渡された方に。」アブラムはすべての物の十分の一を彼に与えた。

王であり、いと高き真の神様の祭司であるメルキゼデクはパンとぶどう酒を持って現れ、アブラムに祝福を与えました。

メルキゼデクという人は唐突に登場して、アブラムを祝福するのですが、創世記にはここにしか出てきません。
ところが、詩編110編や、新約聖書のヘブル人への手紙5~7章でこの人のことが書かれています。

サレムというのは「平和」という意味を表す言葉なので、「平和の王」「平和の君」と言うことができます。
そして、メルキゼデクという名前には、「義の王」という意味があります。

聖書の中で、「義の王」「平和の君」と呼ばれるのは、神さまが約束していた救い主です。
実はこんなところに、キリストが出て来て、アブラムを祝福しているのです。
もちろん、この時は「ナザレのイエス」として生まれる2000年も前の話ですから、キリストとして登場したのではありません。
三位一体の神の子なる神としてアブラムの前に現れ、直接祝福したのだと思います。
こんな風に、キリストは時々旧約聖書の中でも登場しています。
おもしろいですね。

もう一つの戦い

一方で、ソドムの王もまた、アブラムを訪れます。
ケドルラオメル王に勝利したアブラムがこのまま王になっては困ると思ったのかもしれません。
彼は条件を持ちかけて、ソドムの王としての権威を取り戻そうとします。

創世記 14:21 ソドムの王はアブラムに言った。「人々は私に返し、財産はあなたが取ってください。」

ソドムの王が持ちかけた条件は、戦利品はあなたの物にしてもいいから、王としての権利は私に返して欲しいというものでした。
アブラムは、ソドムを始めとする5つの国々を占領したケドルラオメル達に勝利したのですから、アブラムが望みさえすればそれらの国々の王となることもできたでしょう。

でも、アブラムはその道を選ばなかった。
それが神さまの計画ではないことを知っていたからです。

しかし、アブラムが王になる気がないとしたら、ソドム王の提案はさらに魅力的でした。
すべての財産を自分のものにしてもいいというお墨付きをくれたのですから。

しかし、アブラムはそれも断ってしまいます。

創世記 14:22 アブラムはソドムの王に言った。「私は、いと高き神、天と地を造られた方、【主】に誓う。
14:23 糸一本、履き物のひも一本さえ、私はあなたの所有物から何一つ取らない。それは、『アブラムを富ませたのは、この私だ』とあなたが言わないようにするためだ。

「この報酬を受け取ると、ソドムの王が彼を富ませたことになってしまう」とアブラムは感じたのです。
そしてアブラムは、すべてを神さまの栄光とするために、この報酬を断りました。

「そこまでしなくてもいいんじゃないか?」
「良いと言うんだから、それくらい受け取ればいいのに」
と、僕たちは思うかもしれません。

でも、ここで起こっていたのは単なる交渉ではなく、霊的な戦いが背後で繰り広げられていたのです。
この時は、不正とは言わないまでも不誠実なかたちで財産や力を受け取ること。
そして、全ては自分の力で勝ち取ったものだと思わせる誘惑です。

アブラムの中の罪が試される誘惑でしたが、この時は明らかにソドムの王を通して、悪魔の誘惑が働いていました。
これを受け取っていたら、アブラムは驕り、高ぶる金持ちとなっていったことでしょう。

このような誘惑、戦いに、僕たちはいつでも直面します。
僕たちは、そんな誘惑に乗らず、すべてを誠実に、栄光を神さまに返したいものですね。