使徒4章 迫害の中で語られるイエスの名
あらすじ
美しの門で足の不自由な人が癒された後、ペテロとヨハネは神殿で人々に福音を語っていました。
すると祭司たち、神殿守衛長、サドカイ人たちが現れ、二人を捕らえます。
彼らが問題にしたのは、
「イエスの復活を宣べ伝えていること」
でした。
二人は一晩留置されますが、それでも福音は広がり、
男の数だけで五千人ほどになった
と記されています。
翌日、宗教指導者たちはペテロたちを尋問します。
「何の権威によって、このことをしたのか。」
するとペテロは聖霊に満たされて、
「あなたがたが十字架につけ、神が死者の中からよみがえらせたナザレ人イエス・キリストの名によるのです。」
と大胆に証言します。
議会は二人を脅しますが、彼らは、
「私たちは、自分たちが見たこと、聞いたことを語らないわけにはいきません。」
と答えます。
教会は集まって祈り、聖霊に満たされ、さらに大胆に神のことばを語りました。
また信徒たちは心を一つにし、持ち物を分かち合いました。
その中にはバルナバもいました。
背景
使徒3章では、聖霊によって最初の大きな奇跡が行われました。
使徒4章では、その奇跡が最初の迫害を引き起こします。
ここでルカは重要なことを示します。
それは、神の国が広がる時、必ず反対も起こるということです。
ルカ福音書でイエスが拒絶されたように、今度は弟子たちも拒絶を経験し始めます。
しかし、復活の主の働きは止まりません。
なぜ復活が問題だったのか
サドカイ人たちは復活を信じていませんでした。
ところが使徒たちは、
「イエスはよみがえられた」
と語っています。
しかも単なる個人的体験ではなく、
「神がイエスを主とキリストとして立てられた」
と宣言していました。
これは宗教指導者たちにとって大きな脅威でした。
彼らが処刑したイエスを、神が認められたことになるからです。
聖霊に満たされたペテロ
ルカはここで、
「ペテロは聖霊に満たされて言った」
と記します。
これは使徒2章のペンテコステの続きです。
以前のペテロはどうだったでしょうか。
イエスを三度否認しました。
ところが今は最高議会を前にして、
「イエスこそ救い主である」
と大胆に語っています。
ここに聖霊の働きがあります。
教会の力は人間の勇気ではなく、聖霊から来るのです。
「ほかのだれによっても救いはない」
ペテロは有名な言葉を語ります。
「この方以外には、だれによっても救いはありません。」(使徒4:12)
ここで言う救いは、単に死後の問題だけではありません。
文脈では、
- 癒し
- 回復
- 罪の赦し
- 神との和解
を含んでいます。
ルカ福音書で語られてきた
「失われた者を捜して救う」
神の働きが、今やイエスを通して実現したのです。
「語らないわけにはいかない」
議会は二人を脅し、
「もうイエスの名によって語るな」
と命じます。
するとペテロとヨハネは答えます。
「神に聞き従うよりも、あなたがたに聞き従う方が正しいかどうか判断してください。」
そして、
「私たちは、自分たちが見たこと、聞いたことを語らないわけにはいきません。」
と言います。
ここがこの章の中心です。
彼らは反抗したかったのではありません。
ただ、
復活した主を知ってしまった以上、黙ることができなかった
のです。
迫害の中での祈り
釈放された二人は教会へ戻ります。
すると教会は恐れて隠れるのではなく、祈ります。
興味深いことに、
「迫害を取り除いてください」
とは祈りません。
彼らはこう祈ります。
「しもべたちに、大胆に御言葉を語らせてください。」
神の国の前進を求めたのです。
そして祈り終わると、
「一同は聖霊に満たされ、大胆に神のことばを語り出した。」
とあります。
心を一つにした教会
章の最後では、教会の交わりが描かれます。
信徒たちは、
「心と思いを一つにしていた。」
とあります。
誰も自分のものを自分だけのものとは考えませんでした。
これは強制的な共有制度ではありません。
聖霊によって生み出された愛の結果です。
神の国は単に個人の信仰ではなく、新しい共同体も生み出すのです。
神の国とのつながり
使徒1章では、
「あなたがたはわたしの証人となる」
という約束が語られました。
使徒2章では、そのための力として聖霊が与えられました。
そして使徒4章では、
その証言が最初の迫害に直面します。
しかし神の国は止まりません。
むしろ迫害の中で証言はさらに強くなっていきます。
ここにルカが描く神の国の特徴があります。
神の国は武力や政治力ではなく、
聖霊と証言によって広がるのです。
この章が私たちに語ること
私たちはしばしば、困難がなければ証しできるのに、と思います。
しかし使徒たちは迫害の中でこそ力強く証ししました。
なぜなら彼らは復活の主を知っていたからです。
また彼らは、自分たちの強さに頼りませんでした。
祈り、聖霊に満たされることを求めました。
教会の力は人数でも資金でもありません。
復活の主と聖霊の働きにあります。
だから神の国は、反対の中でも前進し続けるのです。
この章の中心メッセージ
復活したキリストを証しする教会には迫害が起こる。
しかし聖霊に満たされた弟子たちは恐れずに語り続けた。
神の国は人間の力ではなく、聖霊による大胆な証言と祈りによって広がっていく。
「この方以外には、だれによっても救いはありません。」(使徒4:12)
「私たちは、自分たちが見たこと、聞いたことを語らないわけにはいきません。」(使徒4:20)
「一同は聖霊に満たされ、大胆に神のことばを語り出した。」(使徒4:31)
最高法院(サンヘドリン)とは?:
ペテロとヨハネが立たされたのは、ユダヤ社会で最も権威ある宗教裁判所でした。
最高法院(サンヘドリン)は、この時代ユダヤ社会で最高の権威を持っていた宗教議会です。
約70名+議長(大祭司)で構成され、主に次の三つのグループから成っていました。
- 祭司長(大祭司一族)
神殿を管理し、政治的にも強い影響力を持つ支配層。 - サドカイ派
神殿貴族階級。復活や天使を否定し、ローマとの協調を重視。 - パリサイ派
律法に厳格で、民衆からの支持が厚い学者グループ。
この三者が集まって、宗教・法律・政治の最高決定機関を形成していました。
特に宗教裁判では、ユダヤ社会で最も強い権威を持っていました。
この時、彼らが対面したのはイエスさまを裁いたのと同じメンバーです。
それを考えると、この時にどれほど緊張感のある場面だったかが想像できるでしょう。

