ルカ13:18-21 『ルカ67 神の国は広がる』 2016/07/10 松田健太郎牧師
ルカの福音書13:18~21
13:18 そこで、イエスはこう言われた。「神の国は、何に似ているでしょう。何に比べたらよいでしょう。
13:19 それは、からし種のようなものです。それを取って庭に蒔いたところ、生長して木になり、空の鳥が枝に巣を作りました。」
13:20 またこう言われた。「神の国を何に比べましょう。
13:21 パン種のようなものです。女がパン種を取って、三サトンの粉に混ぜたところ、全体がふくれました。」
今日の聖書個所で、イエス様は神の国についてお話しています。
神の国とは何でしょう?
神の国とは、死んでから行く天国の事・・・ではありませんね。
神の国とは、教会の事・・・でもありません。
神の国とは、神様の支配があるところ。
それは、私たちの心の中に広がっていき、地域に影響を与え、国を変えていく力を持つものです。
この神の国について、イエス様はふたつのたとえ話をしています。
ひとつはからし種のたとえ話。
からしの種のたとえ話は何度も出てくるので、ご存知の方も多いと思います。
からしの種とは、とても小さい種でしたね。
ここでは、その種が大きく生長して木になったという話をしています。
もうひとつは、パン種のたとえ話。
こちらは同じ“種”という言葉ですが土に植えるものではありません。
普通に小麦粉を練って焼いてもせんべいになるだけです。
小麦粉に混ぜて、ふっくら膨らむようにするのがパン種ですね。
からし種とパン種の共通点は、どちらも大きく広がり成長するという事です。
神の国は、広がり、成長する。
今日は、神の国がどのようにして広がり、成長するのか、そして神の国が広がるとはどういうことなのか、一緒に考えていきたいと思います。
① 目に見えない
からし種とパン種がどのようにして広がり成長するかという共通点のひとつは、どちらも成長は目に見えないという事です。
神様の支配の広がりも、私たちの目にはなかなか見えません。
最初にイエス様を救い主として受け入れて、信仰を持った後も、自分にはなかなか変化を見る事ができなかったりします。
何年も経った後にも、変わり映えしない自分にがっかりしてしまう事も少なくはありません。
しかし、神の国は私たちの内に根付くと、確かに影響を与え、広がっています。
世界への広がりも、決して目に見える形で広がっていったわけではありません。
クリスチャンは大きな迫害の中にいましたから、世間には目に触れないところで密かに広がっていき、力を増やしていきました。
現代でも、中国でのクリスチャンの広がりは、最近まで表面的には見えませんでした。
今でも、中国にクリスチャンがどれだけいるのか、完全に把握している人はいません。
しかし、気が付けば日本の人口くらいのクリスチャンが中国にはいると言われるようになりました。
日本での福音の広がりは、やはりあまり見えてきません。
しかし、見えないところで必ず人の心を動かし、潜在的に広がっていると僕は思います。
この広がりがはっきりと見えるようになった時、日本の大半の人たちが福音に変えられていくような状態になっているといいですね。
② 力は内側から起こる
さて、からし種とパン種の2つめの共通点は、広がり成長する力は、表面的なものではなく、内側から起こる力によるのだということです。
力は内側から起こっているのだから、見えないはずですね。
私たちは、表面的な成長ばかりを求めてしまいがちです。
身長、体重、テストの点、営業成績など、目に見える形での成長は確かにわかりやすいですが、それが全てではありません。
顧客対応はマニュアル化し、せいぜい研修を受けさせて外側だけを教育します。
それは教会でもあまり変わりません。
どのようにふるまい、どのような言葉遣いをするかという事に一生懸命になってしまう傾向があります。
しかしそれで表面の行いが変わっても、中身が変わっていないなら、いざという時にはやっぱり元の行動に戻ってしまうのです。
ある女性が、飛行機の乗り換えのためにロンドンのヒースロー空港にいました。
彼女は仕事で海外に来たものの、英語は少ししか話せなかったそうです。
さて、次の飛行機が出るまでにはいっぱい時間があるので、彼女はお土産を買って、ラウンジに座っていました。
しばらくしてお腹がすいてきた彼女は、おみやげのクッキーを一箱開ける事にしました。
ところが、隣の席に座っているイギリス紳士風の男が、彼女をじっと見つめているのに気が付いたのです。
ちょっと不審に思いながらも、彼女は男を無視して、箱を開け、クッキーを食べ始めました。
すると驚いたことに、紳士風の男はニコッと微笑むと、彼女が持っている箱に手を伸ばし、クッキーを食べ始めたのです。
「なんだこいつ」と思いましたが、英語でなんと言ったらいいのかわからないし、あまり大ごとにしたくないですから、彼女は黙ってクッキーを食べ続けました。
ところが、問題はそれで終わらなかったのです。
驚きべき事に、この男もまたクッキーに手を伸ばし続け次から次へと食べ始めたのです。
それからしばらくの間ラウンジには、日本人女性とイギリス紳士風の男性が、黙々とクッキーを食べ続けるという不思議な光景が続きました。
そして彼女に、最後の試練の時が訪れました。
とうとう最後の一個になってしまったのです。
そしてその最後の一個を、あろう事かこの男が取ってしまったのです。
「ハッ」として見上げた女性に、紳士風のその男は、もう一度ニコッと笑うと、それを半分に割って、彼女に差し出したのです。
彼女の中ではイギリス人の印象は最悪になりました。
その時彼女は、「これがイギリス人の実態か! こんな泥棒みたいなヤツがいる国には2度と来るものか」と心に決めたそうです。
そして飛行機の時間が来て、日本に帰国する飛行機に乗り込みました。
ところがしばらくして、彼女は目を疑う光景も目にします。
先ほどラウンジであったあの男が、同じ飛行機の中に入ってきて、しかもなんと隣の席に座ったのです。
彼女の頭には、ラウンジでの悪夢が蘇りました。
でも、今更席をかえてもらうだけの英語力もない。
それでも親しげに話しかけてこようとする胡散臭いイギリス人をけん制し、機内食を何とか死守しながら、彼女は地獄のような15時間を経験しました。
「隣人を愛しなさい」という言葉はどこに行ってしまったのでしょう?
さて、この女性は、マニュアルや研修によってどれくらいこのイギリス人を愛せるようになると思いますか?
ふるまいを正すという事が、どれくらい役に立つでしょう?
表面的には愛しているようにふるまう事はできるかもしれません。
でも、それはすごいストレスですね。
こんな風に人を愛してばかりいると、病気になってしまいますよ。
実は、この話には続きがあります。
彼女が家に帰ってスーツケースを開けてみると、なんと開封していないクッキーの箱が出てきたのです。
どういうことでしょう? つまり彼女は、あのイギリス人紳士のクッキーを勝手に開けて食べていたのです。
どろぼうはあの男ではなく、自分の方だったのです。
それから後のこの女性はどうなったでしょう?
イギリス人を愛せるようになったと思いますか?
もしも、今度自分のクッキーが食べられることがあったら、最後の一枚を相手にあげられる余裕があるかもしれません。
どうしてこうなりましたか?
ふるまいを変える研修をしたのではなく、彼女がイギリス人を見る目が変わったのです。
内側から変わるというのは、こういう変化の事を言うのです。
神様が私たちに求めているのは、愛するようなふるまいをする事ではありません。
私たちが互いに愛し合う事です。
見えない種の力が内側から成長し、小麦粉をふくらませるように、内側から働く力が、私たちの行動を変えるのです。
③ 小さいところから始まり、大きく広がる
もうひとつ、からし種とパン種と神の国の共通点は、小さいところから始まるという事です。
小さなひとつぶの種が木のように大きくなり、目に見えないほど小さいイースト菌が、何キロもある小麦粉全体を膨らませる力を発揮します。
イエス様から始まった福音は、12人の弟子たちに広がり、それがやがて世界全体に広がっていきました。
これに内側から人を変える力が本当に加わったら、どれだけ素晴らしいことがこの世界に起こるでしょうか?
日本のクリスチャンは1%未満と言われます。
その中で本当に内側からの力を持つクリスチャンはほんのわずかでしょう。
しかし、からし種が木になるように、パン種が小麦粉を膨らませるように、神の国は日本中、世界中に広がっていきます。
その事を信じませんか?
そのためにはまず私たちが、内側からの力で変えられていきましょう!