使徒18章 コリントでの働き:神の導きと人との協働による宣教の成熟
あらすじ
アテネを去ったパウロは、商業都市コリントへ向かいます。
そこで彼は、最近ローマから追放されていたユダヤ人夫婦、アクラ、プリスキラ(プリスカ)と出会います。
同じ天幕作りの職人だったため、彼らと共に働きながら福音を語りました。
安息日ごとに会堂で語り続けていましたが、シラスとテモテが到着すると、パウロはさらに熱心にキリストを証しします。
しかしユダヤ人たちの反対が激しくなると、
「今後は異邦人の方へ行く。」
と宣言します。
その後、会堂司クリスポをはじめ、多くのコリント人が信じてバプテスマを受けました。
ところがパウロは大きな反対の中で恐れを抱いていたようです。
その時、主は幻の中で語られます。
「恐れないで語り続けなさい。黙ってはいけない。」(18:9)
パウロは一年六か月の間コリントに滞在し、神のことばを教えました。
その後、ユダヤ人たちはパウロを総督ガリオの前に訴えますが、ガリオは取り合いませんでした。
旅の終わりにはエペソを訪れ、そこでアクラとプリスキラを残します。
さらにアポロという有能な教師が登場し、彼らによってより正確に福音を教えられます。
背景
使徒17章では、パウロはアテネの知識人たちに福音を語りました。
しかし大きな教会が生まれたとは記されていません。
続く18章では、舞台がコリントへ移ります。
コリントは当時、
- 商業の中心地
- 国際都市
- 道徳的退廃で有名な町
でした。
後にコリント人への手紙が書かれることから分かるように、この町は初代教会史の中で非常に重要な場所となります。
アクラとプリスキラとの出会い
この章でまず印象的なのは、宣教が一人で進められていないことです。
パウロはアクラとプリスキラに出会います。
彼らは後に、
- エペソ教会
- ローマ教会
でも重要な働きをする夫婦になります。
ここでルカが示しているのは、神の国は協力者たちによって前進するということです。
パウロ一人が英雄のように働くのではありません。
神は多くの人を結び合わせて働かれます。
働きながら福音を語るパウロ
パウロは天幕作りをしながら生活費を得ていました。
興味深いことに、彼は使徒でありながら職業を持っています。
これは福音の価値を下げるためではありません。
むしろ、
福音のために自由でありたい
という思いからでした。
宣教と日常の労働は対立していません。
神の国の働きは日常生活の中でも行われるのです。
ユダヤ人の拒絶と異邦人への広がり
パウロはまず会堂で語ります。
しかし反対が強まると、
「あなたがたの血はあなたがた自身に帰れ。私は責任がない。今後は異邦人の方へ行く。」(18:6)
と言います。
これは使徒13章のピシディアのアンティオキアでも見られた流れです。
福音はまずユダヤ人へ語られます。
しかし拒絶される時、異邦人へ広がっていきます。
神の国は閉ざされるのではなく、さらに広がるのです。
クリスポの回心
非常に象徴的なのは、会堂司クリスポが信じたことです。
反対がある一方で、ユダヤ人の中にも救われる人々がいました。
神は民族全体を退けておられるのではありません。
福音を受け入れる者には、常に救いの門が開かれているのです。
「恐れないで語り続けなさい」
この章の中心は主の幻でしょう。
イエスはパウロに言われます。
「恐れないで語り続けなさい。黙ってはいけない。」(18:9)
興味深いのは、この言葉が与えられたということは、
パウロ自身が恐れを経験していた
ことを示している点です。
私たちは時に、パウロを超人的な存在のように考えてしまいます。
しかし彼もまた弱さを持つ人間でした。
だからこそ主は励まされます。
「この町にはわたしの民がたくさんいる」
主は続けて言われます。
「この町には、わたしの民がたくさんいるからだ。」(18:10)
これは非常に深い言葉です。
まだ信じていない人々が大勢いました。
しかし主は、
「わたしの民」
と呼ばれます。
神はすでにご自分の救いの計画をご存じなのです。
パウロは結果を作るために働いたのではありません。
神が備えておられる人々へ福音を届けるために働いたのです。
ガリオの裁判
ユダヤ人たちはパウロを総督ガリオに訴えます。
しかしガリオは、
「これは宗教上の問題だ。」
として訴えを退けます。
一見すると世俗的な判断に見えます。
しかし結果的には福音宣教を守ることになりました。
ここにも神の摂理が見えます。
神は信者だけでなく、世の権力者さえ用いてご自身の計画を進められるのです。
アポロの登場
章の後半ではアポロが登場します。
彼は、「聖書に通じた雄弁な人」でした。
しかしまだ理解が不十分でした。
そこでアクラとプリスキラが、「神の道をもっと正確に説明した。」とあります。
ここにも美しい姿があります。
有能な奉仕者であっても学び続ける必要があります。
また、名もなき信徒の奉仕が大きな働きを支えているのです。
神の国とのつながり
使徒18章は、神の国が成熟していく姿を描いています。
ここには、
- 使徒
- 夫婦
- 新しい信徒
- 教師
- 協力者
が登場します。
神の国は一人の働きではありません。
多くの人が異なる賜物を持ちながら、一つの福音のために仕えているのです。
この章が私たちに語ること
私たちは時に、
「自分はパウロのような働きはできない」
と思うことがあります。
しかし使徒18章を見ると、
神はアクラやプリスキラのような人々も豊かに用いておられます。
また、この章は恐れについても教えています。
パウロでさえ恐れました。
しかし主は、
「恐れないで語り続けなさい」
と励まされました。
神の国の働きは、人間の強さによってではなく、主の臨在と約束によって支えられているのです。
この章の中心メッセージ
コリントでの働きを通して、神はパウロだけでなく多くの協力者たちを用いて福音を前進させられた。
恐れや反対の中でも、主は「恐れるな」と励まし、ご自身の民を救いへ導かれる。
神の国は個人の働きではなく、神の導きと共同体の協力によって広がっていく。
「恐れないで語り続けなさい。黙ってはいけない。」(使徒18:9)
「この町には、わたしの民がたくさんいるからだ。」(使徒18:10)
「アクラとプリスキラは、神の道をもっと正確に説明した。」(使徒18:26)


