創世記26章 イサクの井戸

目次

ペリシテ人

さて、カナンの地で飢饉が起こったので、イサクはゲラル地方のアビメレクの元に身を寄せます。
アビメレクと言えば、父アブラハムとの間に同盟関係を結んでいた、あのアビメレクです。

さて、アビメレクはペリシテ人の王でした。
ペリシテ人は海の民で、どこから来たのかということは謎ですが、海を渡ってこの地域に住み着いた人々です。
このペリシテという言葉から、ゲラルを初めこの一帯のことをパレスチナと呼びます。
聖書にはペリシテ人がしばらく出てきて、しばしばイスラエルとの間に戦争が起こります。
旧約時代のイスラエルは、常にペリシテ人との戦いに直面していました。
その争いは、この時代から始まっていたことがわかります。

ちなみに、現代「パレスチナ人」と呼ばれている人々は、このパレスチナの地域に移り住んだことからそのように呼ばれるようになったアラブ系の人たちです。
この時代のペリシテ人とは全く違う民族ですね。

イサクの失敗

さて、アビメレクの元に身を寄せたイサクでしたが、もはやお馴染みとなったあの失敗を、アブラハムの子であるイサクもしてしまいます。
自分の妻を妹だと言ってしまうという失敗です。

「美しい妻を持っていると、自分が殺されて妻が略奪されるかもしれないという恐れ」から、こういうことが起こります。
でもそれは、いざとなったら妻を差し出して自分は助かろうという話しなんですよね。
当時の社会ではよくあったことなのかもしれませんが、現代人の僕たちから見ると、「イサク、ひでーな」と思わないではいられません(笑)。

そして何よりの問題は、これは彼らだけの問題ではなく、救い主が生まれてくるかどうかの危機にも関わることだということでもあります。
まぁ、いざとなれば神さまは、別のルートからでも救い主を送ってくださるかもしれませんが、アブラハムやイサクの中に、その使命が託されているという自覚が欠如していたことが、一番の問題なのです。

使命が与えられれば、そこには責任も伴います。
僕たちにもそれぞれに使命が与えられていて、それに伴う責任があると思います。
でもそこには、責任に付随する大きな祝福もあるんです。

さて、アビメレクが窓から下を見ると、イサクがリベカを愛撫しているのが見えてしまいます。
ふたりが夫婦関係にあることがわかったアビメレクは、「お前もかよ!」と突っ込みをいれたくなったのではないでしょうか?
それどころか、アブラハムの時には神さまからの介入があって恐れを抱いているアビメレクは、「お前たち親子は我々を陥れようとしているのか!」と腹を立てたかもしれませんね。

創世記 26:9 アビメレクは、イサクを呼び寄せて言った。「本当のところ、あの女はあなたの妻ではないか。なぜ、あなたは『あれは私の妹です』と言ったのか。」イサクは「彼女のことで殺されはしないかと思ったからです」と答えた。
26:10 アビメレクは言った。「何ということをしてくれたのか。もう少しで、民の一人があなたの妻と寝て、あなたはわれわれに罪責をもたらすところだった。」

アビメレクは、直ちに他の人たちにお触れを出し、「イサクの妻には手を出さないように」と命じます。

アブラハムの時代には、このようなやり取りを通してアビメレクが神さまを恐れるようになり、ある程度対等な関係を持てるようになりました。
しかしこの出来事は、返ってアビメレクたちとイサクとの関係を悪くしてしまったように思います。

ベエル・シェバ

さて、ゲラルの地域でイサクはたくさんの収穫を得て、みるみる栄えていきます。
でもそれは、アビメレクたちペリシテ人たちに、妬みをもたらすことにもなっていきます。

創世記 26:14 彼が羊の群れや牛の群れ、それに多くのしもべを持つようになったので、ペリシテ人は彼をねたんだ。
26:15 それでペリシテ人は、イサクの父アブラハムの時代に父のしもべたちが掘った井戸を、すべてふさいで土で満たした。

このことを発端として、イサクとペリシテ人たちとの間には井戸を巡る争いが起こりました。
これは、アブラハムの時代に結ばれた条約の違反でもありますね。

アビメレクたちは、この時に起こった争いを通して、アブラハムだけではなく、その子イサクにも神さまの特別な祝福が注がれていることを確信します。

アブラハムの時代に結ばれた同盟関係は壊されましたが、イサクはもう一度この地で条約を結びなおすことになりました。
この地は、もう一度「ベエル・シェバ(誓いの井戸)」と名付けなおされ、そのように呼ばれるようになっていきます。

僕たちは、「親がクリスチャンだから」みたいなことに甘えていてはいけないなぁと思います。
大切なのは、「自分自身が神さまとの関係に生きているかどうか」ですね。
その意味では、「教会に通っている」というだけで良いものでもないのだと思います。
力は、「神さまとの関係」の中にあるからです。

エサウの妻たち

そのころ、イサクの子どもたちの内、兄のエサウがヒッタイト人たちの妻をふたり娶ります。
ヒッタイト人と言えば、鉄の製法を発明して軍事力を強化し、エジプトとも争うような一大帝国を築いていくことになる国です。
当然、違う神を信仰していたでしょう。

この結婚は、イサクとリベカを悩ませたと聖書には書かれています。