使徒6章 奉仕の分担とステパノの登場

あらすじ

教会は急速に成長していました。

しかし人数が増えるにつれ、新たな問題も生じます。

ギリシア語を話すユダヤ人たちの中から、「日々の配給で、私たちのやもめたちがなおざりにされている」という不満が起こりました。

そこで十二使徒は教会全体を集め、「私たちは神のことばを後回しにして、食事の世話をするのはよくありません。」と言います。

そして、「御霊と知恵に満ちた評判の良い人を七人選びなさい。」と提案しました。

選ばれたのは、

  • ステパノ
  • ピリポ
  • プロコロ
  • ニカノル
  • テモン
  • パルメナ
  • ニコラオ

でした。

使徒たちは彼らのために祈り、手を置きました。

その結果、「神のことばはますます広まり」弟子の数はさらに増えていきます。

その後、ステパノが力強く働き始め、やがて大きな対立が生まれていきます。

これは次の章への導入となっています。


背景

使徒2章から5章にかけて、

  • 聖霊降臨
  • 教会の誕生
  • 奇跡
  • 迫害

が描かれてきました。

しかし6章では初めて、教会内部の組織的課題が登場します。

ここでルカは重要なことを示します。

神の国は成長するにつれて課題も生じます。

しかし神の働きは混乱によって止まるのではなく、知恵によって前進していくのです。


初代教会に起こった問題

不満を抱いたのは、ギリシア語を話すユダヤ人たちでした。

当時の教会には、

  • ヘブル語・アラム語系のユダヤ人
  • ギリシア語系のユダヤ人

がいました。

文化的背景の違いがあったのです。

問題は神学論争ではありません。

やもめたちへの支援に偏りが生じたことでした。

つまり最初の教会も完全ではありませんでした。

人が集まるところには課題が生まれます。

しかし重要なのは、その課題にどう向き合うかです。


使徒たちの判断

使徒たちは問題を無視しませんでした。

しかし同時に、すべてを自分たちだけで抱え込もうともしませんでした。

彼らは言います。

「私たちは、祈りとみことばの奉仕に専念します。」(使徒6:4)

これは奉仕の軽視ではありません。

教会には様々な働きがありますが、それぞれに与えられた召しがあることを示しています。

使徒たちは、みことばと祈りに集中する必要がありました。


七人に求められた条件

興味深いのは選ばれる条件です。

使徒たちは、料理の得意な人や会計能力の高い人を求めたとは書かれていません。

まず、「御霊に満ちた人」を求めています。

さらに、「知恵に満ちた人」を求めています。

つまり教会の奉仕は単なる事務作業ではありません。

人々に仕える働きも霊的な務めなのです。


最初の執事か

この七人は一般的に執事の起源と考えられることが多いですが、本文では「執事」という言葉は使われていません。

むしろルカが強調しているのは、奉仕の働きが教会において重要な召しであるということです。

実際にステパノもピリポも、後に福音宣教者として大きく用いられます。

彼らは単なる運営担当者ではありませんでした。


神のことばはますます広まった

この章で特に注目したいのは結果です。

ルカはこう記します。

「こうして神のことばは広まり、弟子の数は非常に増えていった。」(使徒6:7)

使徒の働きでは繰り返しこのような表現が出てきます。

問題や迫害が起こるたびに、神のことばがさらに広がるのです。

ルカの関心は組織論ではありません。

神の国が前進していることを示したいのです。


ステパノの登場

後半ではステパノが前面に出てきます。

彼は、

「恵みと力に満ちた人」

として紹介されます。

そして大いなるしるしと不思議を行います。

しかし彼の働きは反対を引き起こします。

ある者たちは彼に議論を挑みますが、

「彼が語る知恵と御霊に対抗できなかった。」

とあります。

そこで彼らは偽証を用いて彼を訴えるのです。

ここから使徒の働きは新しい段階へ入ります。


神の国とのつながり

使徒1章で、「あなたがたはわたしの証人となる」という使命が与えられました。

使徒2章では聖霊が与えられ、

3章では奇跡、

4章と5章では迫害の中での証言が描かれました。

そして6章では、

神の国が広がるために教会が整えられていきます。

神の国は混乱によって止まりません。

むしろ神は問題さえ用いて、新しい働き手を起こされるのです。


この章が私たちに語ること

教会には問題が起こります。

人数が増えれば課題も増えます。

しかし問題の存在そのものが失敗を意味するわけではありません。

重要なのは、神の知恵によって対応することです。

またこの章は、目立つ奉仕も目立たない奉仕も共に大切であることを教えています。

祈る人も、

語る人も、

世話をする人も、

皆が神の国の働きに参与しているのです。

そして神は、そのような忠実な奉仕の中からステパノやピリポのような働き人を起こしていかれます。


この章の中心メッセージ

教会は成長する中で課題に直面したが、聖霊と知恵によって対応することで、神のことばはさらに広がった。

神の国の前進には祈りの奉仕も実務の奉仕も共に必要であり、神は仕える者たちを通してご自身の働きを進められる。

「御霊と知恵に満ちた、評判の良い人たちを選びなさい。」(使徒6:3)

「私たちは、祈りとみことばの奉仕に専念します。」(使徒6:4)

「こうして神のことばは広まり、弟子の数は非常に増えていった。」(使徒6:7)

 

「ヘレニスト」と「ヘブライスト」の違い:

6章の問題は、 ギリシア語を話すユダヤ人(ヘレニスト) と ヘブライ語/アラム語を話すユダヤ人(ヘブライスト) の間で起こった“文化的な摩擦”です。

  • どちらもユダヤ人

  • しかし生活文化・言語・価値観が異なる

  • 初代教会は多文化コミュニティだった

この背景を知らないと、 「なぜやもめの配給で不公平が起きたのか」が分かりにくくなります。

なぜ使徒たちは「食卓のこと」を手放したのか:

「食卓の配給」は単なる雑務ではなく、 教会の愛の実践そのものでした。

それでも使徒たちはこう言います。

「私たちが神のことばを後回しにして食卓のことに仕えるのは良くない」

これは

  • みことばと祈りに専念する必要

  • 役割分担の確立

  • 教会の組織化の始まり を示す重要な場面です。

背景を知らないと、 「なぜそんなに線引きするのか」が理解しにくくなるでしょう。

「七人」は何者なのか:

奉仕者として選ばれたのは次の7人でした。

  1. ステパノ、
  2. ピリポ
  3. プロコロ
  4. ニカノル
  5. ティモン
  6. パルメナ
  7. アンティオキアの改宗者ニコラオ

選ばれた七人は、単なる配給係ではありません。

  • “良い評判”

  • “聖霊と知恵に満ちた人”

  • ギリシア語名を持つ者が多い(ヘレニスト側への配慮)

つまり、 教会の多文化問題を解決するためのリーダーたちでした。

この“七人の選任”が後の「執事職」の原型となりました。

ステパノが突然「奇跡を行う人物」として登場する理由:

ステパノは配給係の一人ではなく、 恵みと力に満ち、しるしを行う伝道者として描かれます。

  • なぜ彼が奇跡を行えるのか

  • なぜ議会に訴えられるほど影響力があったのか

これらは、 ステパノが“使徒以外で初めて公に語る人物” として特別な役割を持っていたからです。