第一サムエル記19章 追われるダビデ ── 神による守り(19:1-24)
第一サムエル記19章は、サウルのダビデへの嫉妬がついに公然とした迫害へと変わる章です。
18章でサウルは、ダビデが人々から愛され、神に祝福されている姿を見て強い嫉妬を抱くようになりました。
その嫉妬はやがて恐れへと変わり、「サウルは生涯ダビデの敵となった」と記されています。
19章では、その言葉どおりサウルがダビデの命を狙い始めます。
しかし同時に、この章はどれほど強い敵意が向けられても、神のご計画は止めることができないことを示しています。
この章の中心は、神が選ばれた者は、多くの困難に遭っても神の守りの中に置かれているということです。
背景
ダビデはすでに神によって王として選ばれていました。
しかし、まだ王座に就いてはいません。
一方のサウルは王でありながら、神から離れつつありました。
二人の歩みは、これからますます対照的になっていきます。
19章は、その転換点となる章です。
ヨナタンの取りなし(19:1-7)
サウルはついに、「ダビデを殺せ」とヨナタンや家来たちに命じます。
しかしヨナタンはダビデを深く愛していました。
彼は密かにダビデへ知らせ、「身を隠していてほしい」と忠告します。
そして父サウルに対して、ダビデの忠実さを訴えました。
ヨナタンは言います。
「彼はあなたに罪を犯していません。」
「彼は命がけでペリシテ人を討ちました。」
サウルは一時的にその言葉を受け入れ、「主は生きておられる。彼は殺されない。」と誓います。
こうしてダビデはひとまず王宮へ戻ることができました。
ヨナタンは友情だけでなく、正しいことのために立ち上がる勇気を持っていたのです。
再び始まる迫害(19:8-10)
しかし平和は長く続きませんでした。
再びペリシテ人との戦いが起こり、ダビデは大きな勝利を収めます。
するとサウルの中にあった嫉妬が再び燃え上がります。
ある日、ダビデが竪琴を弾いている時、「サウルは槍で壁に突き刺そうとした。」とあります。
これは以前にも起こった出来事でした。
ダビデは身をかわし、その場から逃げ出します。
サウルの心はますます神から離れ、暴力に支配されていったのです。
ミカルによる救出(19:11-17)
サウルはさらに使いを送り、ダビデの家を見張らせます。
翌朝になったら殺そうと考えていたのです。
しかしサウルの娘であり、ダビデの妻でもあったミカルは、「今夜逃げなければ、明日には殺されます。」と警告します。
そして窓からダビデを逃がしました。
さらに寝床に像を置いて病気のように見せかけ、追っ手をだまします。
その間にダビデは安全な場所へ逃れることができました。
こうして神は、今度はミカルを用いてダビデを守られたのです。
サムエルのもとへ逃れるダビデ(19:18-24)
ダビデはラマにいるサムエルのもとへ逃げます。
サムエルは神の預言者であり、かつてダビデに油を注いだ人物でした。
サウルは何度も使者を送り、ダビデを捕らえようとします。
ところが驚くべきことに、「神の霊が彼らの上にも下った。」とあります。
使者たちは預言を始め、ダビデを捕らえることができませんでした。
サウルは二度、三度と別の使者を送りますが、結果は同じでした。
そこでサウル自身が向かいます。
しかし彼もまた神の霊に圧倒され、「預言しながら進み」最後には衣を脱いで一日中横たわることになります。
こうしてサウル自身でさえ、神のご計画を妨げることはできませんでした。
そのため人々は再び、「サウルも預言者たちの仲間なのか。」と言うようになったのです。
この箇所が私たちに語ること
第一サムエル記19章は、神の守りの確かさを教えています。
ダビデは何も悪いことをしていませんでした。
それにもかかわらず、嫉妬や敵意のために追い回されることになります。
しかし神は、ヨナタン、ミカル、サムエルを用いて彼を守られました。
神のご計画の中にいる人を、人間の力で滅ぼすことはできないのです。
また、この章は嫉妬の恐ろしさを教えています。
サウルは最初、ダビデの成功をねたんだだけでした。
しかしその嫉妬はやがて憎しみとなり、ついには殺意へと変わりました。
神から目を離して人と自分を比べ始める時、人の心は簡単にゆがめられてしまうのです。
さらに、この章は神の主権の大きさを教えています。
サウルは王として大きな権力を持っていました。
しかし神が守ろうとされるダビデに手をかけることはできませんでした。
神のご計画は人間の敵意や権力によって阻まれることはないのです。
この箇所の中心メッセージ
サウルはダビデを殺そうと繰り返し試みたが、そのたびに神は様々な人々を用いてダビデを守られた。
ヨナタンやミカルの助け、そして神の霊の働きによって、サウルの計画はことごとく阻まれた。
神が選ばれた者は試練を通ることがあっても、神の守りと導きの中に置かれているのである。
「神の霊がサウルの上にも臨んだ。」(第一サムエル19:23)

