エステル記 3章 ハマンの陰謀:ユダヤ人絶滅法の制定(3:1-15)
1. ハマンの昇進とモルデカイの拒否(3:1-5)
① ハマンの高位昇進
- アハシュエロス王はハマンを高い地位に就かせる
- すべての高官の上に置く
- 王国で大きな権力を持つようになる
ハマンは物語の主要な敵対者として登場する。
② 王の命令
- 王宮の門にいる者たちはハマンにひれ伏す
- 敬意を示すことが求められる
- 王命として従うことが命じられる
③ モルデカイの拒否
- モルデカイだけはひれ伏さない
- 敬礼もしない
- 王宮の役人たちは理由を尋ねる
④ ユダヤ人であることの告白
- モルデカイは自分がユダヤ人であることを明かす
- 信仰的理由から従わなかった
- 妥協しなかった
⑤ ハマンの怒り
- モルデカイの態度を知る
- 激しく怒る
- 個人的な憎しみを抱く
補足:
問題は単なる礼儀違反ではなかった。モルデカイの行動は、神への忠実さを優先する信仰的立場の表れとして理解される。
2. ハマンの計画:民族全体への憎しみ(3:6-7)
① 個人から民族へ
- モルデカイ一人だけでは満足しない
- ユダヤ人全体を滅ぼそうと考える
- 怒りが民族憎悪へ発展する
② ユダヤ人の特定
- モルデカイの民族を調べる
- 帝国内のユダヤ人全体を標的にする
- 滅亡計画を立てる
③ プルを投げる
- 「プル(くじ)」を投げる
- 日と月を決める
- 実行の時期を選ぶ
④ 第十二の月の決定
- アダルの月が選ばれる
- 実行まで時間が与えられる
- 神の摂理が働く余地が残される
補足:
人間の目には偶然のくじ引きに見える。しかし後に、この「プル」がユダヤ民族救出の歴史と結びつき、「プリムの祭り」の由来となる。
3. 王への訴え:偽りに満ちた告発(3:8-11)
① ユダヤ人に対する中傷
- 帝国中に散らされた民族だと述べる
- 他の民族と異なる習慣を持つと訴える
- 国家に有害な存在として描く
② 王への説得
- 王の法律を守らないと主張する
- 放置は得策ではないと言う
- 滅ぼすべきだと進言する
③ 金銭の提案
- 巨額の銀を支払うと約束する
- 王の利益になるよう装う
- 憎しみを政治問題へ変える
④ 王の許可
- 王は指輪を与える
- ハマンに権限を委ねる
- 詳しい調査も行わない
⑤ 権力の委任
- ハマンは自由に計画を進める
- 帝国の権力が利用される
- 危機が現実となる
補足:
王は十分な確認をしないまま決定を下している。一方ハマンは、偏見と虚偽によって大規模な迫害を正当化しようとしている。
4. ユダヤ人絶滅令の公布(3:12-15)
① 勅令の作成
- 第一の月十三日に書記官が招集される
- ハマンの命令が文書化される
- 各州の言語に翻訳される
② 絶滅命令
- 老若男女を問わない
- 子どもも含まれる
- 一日のうちに滅ぼすことが命じられる
③ 財産の略奪
- ユダヤ人の財産を奪うことも許可される
- 憎しみだけでなく利益も動機となる
- 迫害が制度化される
④ 帝国全土への通達
- 百二十七州へ送られる
- 法令として公布される
- 実施日が定められる
⑤ 対照的な結末
- ハマンと王は酒を飲む
- シュシャンの町は混乱する
- 危機の深刻さが明らかになる
補足:
ハマンと王が宴席についている一方で、多くの人々は混乱と恐怖に包まれていた。この対比によって、法令の理不尽さと危険さが強調されている。
まとめ
- ハマンは王によって高い地位に昇進した。
- モルデカイはハマンにひれ伏すことを拒否した。
- ハマンはモルデカイだけでなくユダヤ民族全体を憎むようになった。
- プル(くじ)によって絶滅の日が定められた。
- ハマンは王にユダヤ人を中傷し、滅亡を進言した。
- 王は指輪を与え、計画を承認した。
- ユダヤ人絶滅令が帝国全土に公布された。
- シュシャンの町は混乱に陥った。
- この章は、**「人間の憎しみと権力が結び付く時、非常に大きな悪が生まれる。しかしそのような危機の中にも神の摂理はなお働き続けている」**という神学的教訓を示している。


