詩篇 106篇 背き続ける民と神の憐れみ:繰り返される不信仰と変わらない恵み(106:1-48)
背景
① ハレルヤで始まりハレルヤで終わる詩篇
- 詩篇106篇は
「ハレルヤ」
で始まり、
「ハレルヤ」
で終わる。
- 神の恵みへの賛美で始まり賛美で終わる詩篇である。
② 詩篇105篇との対比
詩篇105篇もイスラエルの歴史を振り返る詩篇であった。
しかし視点が異なる。
詩篇105篇
- 神の真実
- 神の契約
- 神の導き
が中心である。
詩篇106篇
- 民の不信仰
- 民の背き
- 民の失敗
が中心となる。
つまり、
105篇は「神の忠実さ」
106篇は「人間の不忠実さ」
を描いている。
③ 捕囚期を反映する可能性
- 詩篇の最後に民の集合が祈られている。
- 諸国の中から集めてくださいという願いがある。
- 捕囚期または捕囚後の背景が考えられる。
④ 詩篇全体の主題
この詩篇は、
「人は何度も失敗する。しかし神の恵みはなお続く」
という真理を語る。
補足:
詩篇78篇も歴史を振り返ったが、78篇が教育的教訓なら、106篇は罪の告白と憐れみへの祈りである。
1. 主の恵みを賛美せよ(106:1-5)
① 感謝の賛美
「主に感謝せよ。 主はまことにいつくしみ深い。」
- 神は良い方である。
- 神の恵みは変わらない。
- 神の愛は永遠である。
② 神の偉大な御業
- 誰が語り尽くせるだろうか。
- 誰が十分に賛美できるだろうか。
- 神の恵みは計り知れない。
③ 幸いな人
- 正義を守る人
- 神を求める人
- 神の道を歩む人
が幸いである。
④ 憐れみへの願い
- 私を顧みてください。
- 救いを与えてください。
- 民と共に喜ばせてください。
補足:
歴史の失敗を語る前に、詩人はまず神の変わらない恵みを宣言する。
2. 私たちも父祖たちと同じように罪を犯した(106:6-12)
① 共同体の告白
「私たちは父祖たちと同じように罪を犯しました。」
- 自分たちも同じである。
- 過去を批判するだけではない。
- 自分を含めて告白する。
② エジプトでの不信仰
- 神の奇跡を理解しなかった。
- 神の恵みを忘れた。
- 神を信頼しなかった。
③ 紅海での反抗
- 恐れた。
- 不平を言った。
- 神を疑った。
④ 神の救い
- 海を叱責された。
- 海を分けられた。
- 敵を滅ぼされた。
⑤ 一時的信仰
- 神を信じた。
- 神を賛美した。
- しかし長続きしなかった。
補足:
奇跡を見ることと信仰を持つことは同じではないことが示されている。
3. 荒野での反逆の連続(106:13-33)
① すぐに忘れた
- 神の御業を忘れた。
- 神の計画を待たなかった。
- 欲望に支配された。
② 食物への不満
- 肉を求めた。
- 神に不満を抱いた。
- 感謝を失った。
③ コラの反乱
- 権威に反抗した。
- 神の定めを拒んだ。
- 裁きを受けた。
④ 金の子牛
- 偶像を造った。
- 神の栄光を交換した。
- 創造主を忘れた。
⑤ 約束の地への不信仰
- 神の約束を信じなかった。
- 偵察の報告に恐れた。
- 荒野で倒れることになった。
⑥ バアル・ペオル事件
- 偶像礼拝を行った。
- 不品行に陥った。
- 神の怒りを招いた。
⑦ ピネハスの執り成し
- 神の義を示した。
- 災害が止んだ。
- 信仰が評価された。
⑧ メリバの水
- モーセが怒った。
- 民の反抗が続いた。
- 神との関係が傷ついた。
補足:
繰り返し現れるテーマは、
「忘れる」
ことである。
罪の根には神を忘れることがある。
4. 約束の地でも神を忘れた(106:34-43)
① 異邦人との妥協
- 神の命令に従わなかった。
- 異教文化を取り入れた。
- 妥協した。
② 偶像礼拝
- 偽りの神々に仕えた。
- 罠に陥った。
- 神から離れた。
③ 子どもたちの犠牲
- 異教の神々に献げた。
- 無実の血を流した。
- 土地を汚した。
④ 繰り返される背き
- 神に逆らった。
- 神を悲しませた。
- 神の裁きを招いた。
⑤ 神の懲らしめ
- 異邦人の手に渡された。
- 圧迫を受けた。
- 苦しみを経験した。
補足:
約束の地に入っても、心が神から離れるなら祝福は続かないことが示される。
5. それでも神は憐れまれた(106:44-46)
① 苦しみの中の叫び
- 民は助けを求めた。
- 神はその声を聞かれた。
- 神は顧みられた。
② 契約を思い出された
「神は契約を思い起こされた。」
- 神は約束を忘れない。
- 神は真実である。
- 神は契約に忠実である。
③ 豊かな憐れみ
- あわれまれた。
- 見捨てなかった。
- 再び回復へ導かれた。
④ 敵の前でも恵みを与えた
- 同情を得させた。
- 保護を与えた。
- 命を保たれた。
補足:
この詩篇の主人公はイスラエルではなく神である。
民は変わるが、神は変わらない。
6. 回復への祈りと賛美(106:47-48)
① 回復の祈り
「私たちを集めてください。」
- 散らされた民を回復する。
- 神のもとへ帰る。
- 礼拝共同体を再建する。
② 感謝の目的
- 聖なる御名をほめたたえる。
- 神を誇る。
- 神を礼拝する。
③ 永遠の賛美
「イスラエルの神、主がほめたたえられますように。」
- 永遠から永遠まで。
- 神は変わらない。
- 神は賛美にふさわしい。
④ ハレルヤ
- 詩篇は賛美で終わる。
- 希望で終わる。
- 神の恵みで終わる。
まとめ
- 詩篇106篇はイスラエルの失敗の歴史を振り返る詩篇である。
- 民は神の御業を忘れ、繰り返し反逆した。
- 荒野でも約束の地でも不信仰を続けた。
- 偶像礼拝と妥協に陥った。
- その結果、裁きを経験した。
- しかし神は契約を忘れられなかった。
- 神は何度もあわれみを示された。
- 最後に回復と礼拝が祈られる。
- この詩篇は、**「人間は繰り返し神に背くが、神は契約に忠実であり続けられる。救いの希望は人の忠実さではなく、神の尽きることのない憐れみにある」**という神学的教訓を示している。

