詩篇 105篇 契約に真実な神:歴史を導かれる主の恵み(105:1-45)
背景
① 神の契約を賛美する歴史詩篇
- 作者名は記されていない。
- 詩篇78篇や106篇と同じく、イスラエルの歴史を振り返る詩篇である。
- しかし本詩篇の焦点は人間の失敗ではなく、
「神の契約への真実」
に置かれている。
② 歴代誌第一16章との関係
- 詩篇105篇の前半(1~15節)は、ダビデが契約の箱をエルサレムに迎えた際の賛美(Ⅰ歴代誌16:8-22)とほぼ同じ内容である。
- 礼拝と歴史の記憶が結び付けられている。
③ 詩篇106篇との対比
詩篇105篇
- 神の忠実さ
- 神の導き
- 神の契約
が中心。
詩篇106篇
- 民の不信仰
- 民の反逆
- 民の失敗
が中心。
両者は対になっている。
④ 詩篇の主題
「神は契約を決して忘れない」
ということである。
アブラハムへの約束から出エジプト、約束の地の征服まで、
すべては神の契約の成就として描かれる。
補足:
詩篇106篇が「人は失敗する」を強調するなら、105篇は「それでも神は真実である」を強調している。
1. 主の御業を語り継げ(105:1-6)
① 感謝の呼びかけ
「主に感謝し、その御名を呼び求めよ。」
- 神を礼拝する。
- 神を求める。
- 神を賛美する。
② 神の御業を知らせる
- 神の奇しい業を語る。
- 神の救いを証しする。
- 神の栄光を宣べ伝える。
③ 神を誇る
「その聖なる御名を誇れ。」
- 人間を誇らない。
- 自分の力を誇らない。
- 神を喜ぶ。
④ 契約の民への呼びかけ
- アブラハムの子孫
- ヤコブの子ら
に対して語られる。
⑤ 記憶する信仰
- 神の奇跡
- 神のさばき
- 神の約束
を忘れてはならない。
補足:
詩篇103篇が「主の良くしてくださったことを何一つ忘れるな」と語ったように、本詩篇も神の御業を記憶することから始まる。
2. 神は契約を永遠に覚えておられる(105:7-15)
① 主は全地の神
「主は私たちの神。」
- 契約の神である。
- 全世界の主である。
- 歴史の支配者である。
② 契約の記憶
「主はその契約をとこしえに覚えておられる。」
- 神は忘れない。
- 神は約束を破らない。
- 神は真実である。
③ アブラハム契約
- アブラハム
- イサク
- ヤコブ
へ与えられた約束が語られる。
④ 約束の地
- カナンを与える。
- 相続地を与える。
- 民を植え付ける。
⑤ 神の守り
- 民は少数だった。
- 弱かった。
- しかし神は守られた。
「わたしの油注がれた者たちに触れるな。」
という保護の言葉も語られる。
補足:
まだ土地も国家もない時代から、神は契約を守り続けておられた。
3. ヨセフを遣わされた神(105:16-22)
① 飢饉の到来
- 神は飢饉を許された。
- 世界は危機に陥った。
- しかし神には計画があった。
② ヨセフの派遣
「神はひとりの人を彼らの前に送られた。」
- 奴隷として売られた。
- 苦しみを受けた。
- 誤解された。
③ 神の訓練
- 鎖につながれた。
- 試みを経験した。
- 神のことばによって鍛えられた。
④ 高められるヨセフ
- 王に仕える。
- エジプトを治める。
- 多くの命を救う。
⑤ 神の摂理
- 人間には悲劇に見える。
- 神には救済計画だった。
- 神は歴史を支配しておられる。
補足:
創世記50:20の
「あなたがたは悪を計りましたが、神はそれを良いことのために計られました」
という真理が背景にある。
4. エジプトで民を増やされた神(105:23-25)
① ヤコブの移住
- イスラエルはエジプトへ下る。
- 寄留者として住む。
- 神の計画の中にある。
② 増え広がる民
「神は御民を大いに増やされた。」
- 子孫を増やす。
- 契約を進める。
- 約束を実現する。
③ 敵意の発生
- エジプト人は恐れた。
- 圧迫が始まった。
- 奴隷状態へ入った。
④ 神の主権
- 苦難も神の支配の外ではない。
- 神は計画を進められる。
- 契約は止められない。
補足:
苦難の時も神の契約は進み続けている。
5. 出エジプトの神の御業(105:26-38)
① モーセとアロンの召命
- 神が遣わされた。
- 神のしもべとして立てられた。
- 民を導く働きをした。
② エジプトへの災い
- 暗闇
- 血に変わる水
- かえる
- あぶ
- いなご
- 雹
などが語られる。
③ 神の権威
- エジプトの神々より偉大。
- ファラオより偉大。
- 全世界の主である。
④ 解放
「神は銀と金を携えて彼らを連れ出された。」
- 奴隷状態から救出。
- 契約の実現。
- 神の勝利。
⑤ 出エジプトの喜び
- エジプトは彼らを恐れた。
- 民は解放された。
- 神の約束は進んだ。
補足:
詩篇78篇や106篇が民の反応を描くのに対し、105篇は神の働きだけを強調している。
6. 荒野で養われた神(105:39-41)
① 雲と火
- 昼は雲。
- 夜は火。
- 神の臨在が導いた。
② 食物の供給
- うずらを送られた。
- 天のパンを与えられた。
- 必要を満たされた。
③ 水の奇跡
「岩を開くと水がほとばしった。」
- 荒野を潤した。
- 民を養った。
- 神の備えを示した。
④ 忠実な牧者
- 神は民を捨てない。
- 神は導き続ける。
- 神は養い続ける。
補足:
詩篇23篇の牧者の姿を、民族全体の歴史の中に見ることができる。
7. 約束の地の成就(105:42-45)
① 契約の記憶
「神はその聖なる約束を覚えておられた。」
- ここが本詩篇の中心である。
- 神は契約を忘れない。
- 神は約束を守られる。
② 喜びの帰還
- 民は喜んで進む。
- 神が導かれる。
- 神が約束を実現される。
③ 土地の相続
- 諸国の土地を受け継ぐ。
- 神が与えられる。
- 努力によるものではない。
④ 契約の目的
「彼らが主のおきてを守るためであった。」
- 救われるためではない。
- 救われた結果として従う。
- 神との交わりのためである。
⑤ ハレルヤ
- 神への賛美で終わる。
- 神の真実をたたえる。
- 契約の成就を喜ぶ。
神学的意味
① 神は契約に忠実である
- 人は忘れる。
- 神は忘れない。
- 神は約束を守られる。
② 歴史は神の御手の中にある
- ヨセフの苦難
- エジプトの奴隷生活
- 荒野の旅
すべてが神の計画の中にある。
③ 救いは神の恵みによる
- 神が選ばれた。
- 神が導かれた。
- 神が成し遂げられた。
④ キリストへの展望
神の契約への真実は最終的に、
イエス・キリスト
において完全に現される。
神はアブラハムへの約束を決して忘れられなかったのである。
まとめ
- 詩篇105篇は神の契約への真実を歌う歴史詩篇である。
- 神はアブラハムとの契約を永遠に覚えておられる。
- ヨセフを遣わし救いを備えられた。
- エジプトから民を解放された。
- 荒野で守り養われた。
- 約束の地を与えられた。
- すべては神の契約の実現であった。
- 神は決してご自身の約束を忘れない。
- この詩篇は、**「歴史の主は神であり、神はご自身の契約に永遠に忠実である。人の状況がどう見えても、神の約束は必ず成就する」**という神学的教訓を示している。

