詩篇 70篇 速やかな助けを求めて(70:1-5)

背景

① ダビデによる短い嘆きの詩篇

  • 表題には「ダビデによる。記念のために」と記されている。
  • わずか5節から成る非常に短い詩篇である。
  • しかしその内容は切迫感に満ちている。

② 詩篇40篇との関係

  • 詩篇70篇は詩篇40:13-17とほぼ同じ内容である。
  • 詩篇40篇の結びの祈りが独立した詩篇としてまとめられたと考えられている。
  • 特に緊急の助けを求める祈りとして用いられたのかもしれない。

③ 緊急性のある祈り

この詩篇には繰り返し、

「急いでください」

という思いが流れている。

  • 敵が迫っている
  • 苦難が差し迫っている
  • 神の助けが今必要である

という状況である。

④ 詩篇の主題

「苦難の中で神に叫ぶ者は、速やかな助けを求めながらも神に希望を置き続ける。」

ということである。

補足:

詩篇69篇が長い苦難の叫びであったなら、70篇はその苦しみが凝縮された緊急の祈りである。


1. 神よ、急いで助けてください(70:1)

① 切迫した祈り

「神よ、私を救い出してください。」

  • 助けが必要である。
  • 自力では解決できない。
  • 神だけが救いである。

② 有名な祈り

「主よ、急いで私を助けてください。」

  • 今すぐ助けが欲しい。
  • 神の介入を求める。
  • 緊急の叫びである。

③ 神への依存

  • 神こそ避け所。
  • 神こそ救い主。
  • 神こそ助けである。

④ 信仰の本質

  • 困った時に神を呼ぶ。
  • 苦しみを隠さない。
  • 神の前にありのままで出る。

補足:

聖書には長い祈りもあるが、ここでは一言の切実な叫びが描かれている。


2. 敵の計画を挫いてください(70:2-3)

① 命を狙う敵

「私のいのちを求める者が。」

  • 敵意が存在する。
  • 危険が迫っている。
  • 苦難が現実である。

② 敵への裁きの願い

  • 恥を受けるように。
  • 退けられるように。
  • 計画が失敗するように。

と祈る。

③ 悪意への対抗

  • 義人は復讐しない。
  • 神にゆだねる。
  • 神の正義を求める。

④ 嘲る者たち

「あはは、と言う者たち。」

  • 他人の苦しみを笑う者。
  • 神の民を侮る者。
  • 悪を喜ぶ者。

を指している。

補足:

詩篇22篇や69篇にも見られるように、苦難には嘲りが伴うことが多い。


3. 神を求める者の喜び(70:4)

① 対照的な人々

敵とは反対に、

「あなたを求める者たち」

が登場する。

② 喜びの礼拝

「あなたにあって楽しみ、 喜ぶように。」

  • 神が喜びの源である。
  • 神との交わりが祝福である。
  • 神が希望である。

③ 救いを愛する者

「あなたの救いを愛する者。」

  • 神の恵みを知る者。
  • 神の救いを感謝する者。
  • 神を求める者。

である。

④ 賛美の告白

「神は大いなる方。」

  • 神の力への賛美。
  • 神の偉大さの宣言。
  • 信仰の中心的告白。

補足:

苦難の中でも賛美が失われていないことが、この詩篇の大きな特徴である。


4. 私の助け主はあなたです(70:5)

① 自らの弱さの認識

「私は苦しみ、 貧しい者です。」

  • 助けを必要としている。
  • 自分の限界を知っている。
  • 神なしでは生きられない。

② 神への絶対的信頼

「あなたは私の助け主、 私を助け出す方。」

  • 神は助け主である。
  • 神は救い主である。
  • 神は避け所である。

③ 再び急ぎを願う

「主よ、遅れないでください。」

  • 詩篇冒頭と響き合う。
  • 神の速やかな介入を求める。
  • 信仰の叫びで締めくくられる。

④ 希望を持ったまま終わる

  • 問題はまだ解決していない。
  • しかし神を信頼している。
  • 神が答えてくださると信じている。

補足:

詩篇13篇や22篇のように、この詩篇も苦難の中で神に望みを置く祈りで終わる。


神学的意味

① 神は苦難の日の助けである

  • 信仰者は苦難を経験する。
  • 神は叫びを聞かれる。
  • 神は助けを与えられる。

② 祈りは率直でよい

  • 神に急いでくださいと願える。
  • 苦しみを隠す必要はない。
  • 真実な心で祈ることができる。

③ 救いの希望は神にある

  • 人間の力には限界がある。
  • 神だけが救える。
  • 神だけが避け所である。

④ キリストとの関係

イエスも地上において、

  • 苦難の中で祈られた。
  • 神に叫ばれた。
  • 父なる神に信頼された。

信仰者もキリストにならって神に助けを求めることができる。


まとめ

  • 詩篇70篇はダビデによる短く切実な嘆きの詩篇である。
  • 詩人は神に速やかな助けを求める。
  • 敵の計画が失敗するよう祈る。
  • 神を求める者たちの喜びが語られる。
  • 「神は大いなる方」と賛美がささげられる。
  • 詩人は自らを貧しく弱い者と認める。
  • 神こそ助け主であり救い主である。
  • 最後に「主よ、遅れないでください」と祈って終わる。
  • この詩篇は、**「苦難が差し迫る時、信仰者は率直に神へ助けを求めることができる。そして神こそが真の助け主であり、救いの希望である」**という神学的教訓を示している。