詩篇 115篇 偶像ではなく主に信頼せよ (115:1-18)

背景

① エジプトのハレルの一篇

  • 詩篇115篇は、詩篇113~118篇からなる「エジプトのハレル」に含まれる賛美の詩篇である。
  • 過越祭などで歌われ、主なる神の救いと真実をたたえてきた。
  • 特に「偶像」と「生ける神」の対比が中心テーマとなっている。

② 偶像礼拝への挑戦

当時の諸国民は、

  • 金や銀の偶像
  • 人の手による神々
  • 目に見える礼拝対象

を拝んでいた。

しかし詩篇115篇は、

「真に信頼できるのは主だけである」

と宣言している。

③ 礼拝と信頼の詩篇

この詩篇は、

  • 神の栄光
  • 偶像の空しさ
  • 神への信頼
  • 神の祝福

という流れで進む。

④ 詩篇の主題

「人の手で造られた偶像ではなく、生ける主だけが信頼と礼拝に値する方である。」

ということである。

補足:

詩篇114篇が出エジプトの神の力を歌ったなら、115篇はその神と偶像との決定的な違いを示している。


1. 栄光は主に帰せられる (115:1)

① 有名な宣言

「私たちではなく、 主よ、私たちではなく。」

  • 人間が中心ではない。
  • 栄光は神のものである。
  • 神が高められるべきである。

② 神の御名のために

「あなたの御名に栄光を帰してください。」

  • 神の名誉。
  • 神の栄光。
  • 神の偉大さ。

が中心である。

③ 恵みとまこと

「あなたの恵みと真実のゆえに。」

  • 神の慈しみ。
  • 神の契約への忠実さ。
  • 神の変わらない愛。

が栄光の理由である。

④ 礼拝の原則

  • 人は神を指し示す。
  • 神が栄光を受ける。
  • 自己賛美ではなく神賛美である。

補足:

詩篇113篇が神の御名をほめたたえたように、ここでも神の御名が中心に置かれている。


2. 生ける神と偶像の違い (115:2-8)

① 異邦人の問い

「彼らの神はどこにいるのか。」

  • 神を嘲る言葉である。
  • 神の民への挑戦である。
  • 信仰への攻撃である。

② 神の主権

「私たちの神は天におられる。」

  • 神は生きておられる。
  • 神は支配しておられる。
  • 神は自由に働かれる。

③ 偶像の現実

「彼らの偶像は銀や金。」

  • 人間が造ったもの。
  • 被造物である。
  • 神ではない。

④ 偶像の無力さ

「口があっても語れず、 目があっても見えない。」

  • 聞けない。
  • 語れない。
  • 行動できない。

⑤ 偶像礼拝の結果

「それらを造る者も、それに信頼する者も。」

  • 偶像に似てしまう。
  • 霊的に鈍くなる。
  • 真理から離れる。

⑥ 生ける神との対比

  • 神は語られる。
  • 神は見ておられる。
  • 神は聞いておられる。
  • 神は働かれる。

補足:

詩篇135篇、イザヤ44章にも同じ偶像批判が見られる。


3. 主に信頼せよ (115:9-11)

① イスラエルへの呼びかけ

「イスラエルよ、主に信頼せよ。」

  • 神の民への招き。
  • 信仰への招き。
  • 礼拝への招き。

である。

② 主は助けと盾

「主は彼らの助け、 また盾。」

  • 守り手である。
  • 救い主である。
  • 避け所である。

③ 祭司への呼びかけ

「アロンの家よ、主に信頼せよ。」

  • 礼拝の指導者も必要である。
  • 祭司も主に頼る。
  • 神の守りを受ける。

④ すべての礼拝者へ

「主を恐れる者たちよ。」

  • すべての信仰者。
  • 全世代の民。
  • 神を敬う者たち。

への招きである。

⑤ 三度の繰り返し

「主は彼らの助け、 また盾。」

  • 強調の表現である。
  • 神の守りへの確信である。
  • 神への信頼を固めるためである。

補足:

詩篇121篇の「主はあなたを守る方」と同じ信仰が表されている。


4. 主は祝福を増し加えられる (115:12-15)

① 神は覚えておられる

「主は私たちを覚えておられる。」

  • 忘れられていない。
  • 顧みられている。
  • 愛されている。

② 神の祝福

「主は祝福してくださる。」

  • 神の恵み。
  • 神の守り。
  • 神の豊かな賜物。

が与えられる。

③ 小さい者にも大きい者にも

「小さい者も大きい者も。」

  • 神は公平である。
  • 神はすべての人を顧みられる。
  • 神の恵みは広い。

④ 子孫への祝福

「あなたがたと、 あなたがたの子らを。」

  • 契約の祝福。
  • 世代への祝福。
  • 神の忠実さ。

を表している。

⑤ 創造主の祝福

「天と地を造られた主。」

  • 神は創造主である。
  • 神は十分な力を持たれる。
  • 神は祝福を与えられる。

補足:

詩篇127篇や128篇の家庭への祝福と響き合っている。


5. 生きている間に主をほめたたえる (115:16-18)

① 天は主のもの

「天は主の天。」

  • 神の支配領域である。
  • 神の王座である。
  • 神の栄光の場所である。

② 地は人に与えられた

「地を人の子らに与えられた。」

  • 管理を任せられた。
  • 神の代理として生きる。
  • 神の栄光を現す。

使命が与えられている。

③ 生きる目的

「死人は主をほめたたえない。」

ここでは、

  • 今生きている間に
  • 神を礼拝すること

の重要性が語られている。

④ 最後の告白

「私たちは主をほめたたえる。」

  • 信仰の決意である。
  • 礼拝の宣言である。
  • 神への忠誠である。

⑤ ハレルヤ

詩篇は再び、

「ハレルヤ」

で締めくくられる。

補足:

詩篇113篇と同じく、最初と最後が賛美によって結ばれている。


神学的意味

① 栄光は神だけのものである

  • 人のものではない。
  • 偶像のものでもない。
  • 神だけが栄光を受けられる。

② 偶像は救えない

  • 人が造ったものである。
  • 命がない。
  • 力がない。

③ 主は生ける神である

  • 語られる。
  • 聞かれる。
  • 働かれる。
  • 救われる。

④ 神への信頼は祝福をもたらす

  • 神は助けである。
  • 神は盾である。
  • 神は祝福を与えられる。

⑤ キリストとの関係

新約聖書においてキリストは、

  • 目に見えない神の完全な現れ
  • 生ける神の御子
  • 真の救い主

として示される。

偶像が語れないのに対して、キリストは神のことばそのものとして来られた。


まとめ

  • 詩篇115篇は偶像と主なる神を対比する賛美の詩篇である。
  • 栄光は人ではなく主に帰せられるべきである。
  • 偶像は銀や金で造られた無力な存在である。
  • 主は生ける神として天におられる。
  • 神の民は主を信頼するよう招かれる。
  • 主は助けであり盾である。
  • 神はご自身の民とその子孫を祝福される。
  • 生きている者は主を賛美するために生きる。
  • この詩篇は、**「人の造ったものではなく、生ける主に信頼せよ。主だけが救いと祝福を与えることのできる真の神である」**という神学的教訓を示している。