へブル5章 大祭司キリスト(5:1-14)

背景

① 大祭司についての説明の始まり

へブル4章の最後で著者は、

「私たちには偉大な大祭司がおられる」

と語りました。

5章では、その大祭司とはどのようなお方なのかが詳しく説明されます。

② ユダヤ人信徒への説明

読者たちは旧約の祭司制度をよく知っていました。

そこで著者は、旧約の大祭司とキリストを比較しながら、キリストの祭司職の特別さを示します。

③ 苦難を通して完成された救い主

この章では、キリストが単に神の御子であるだけでなく、人として苦しみを経験された大祭司であることが強調されます。

④ 本章の中心テーマ

へブル5章の主題は、「イエス・キリストは神によって任命された完全な大祭司であり、苦しみを通して救いを完成された」ということです。


1. 大祭司の務め(5:1-4)

① 人々の代表

大祭司は人々の代表として神の前に立ちます。

② ささげ物を献げる

罪のための献げ物を神に献げます。

③ 弱さを理解する

大祭司自身も弱さを持つ人間でした。

そのため人々に優しく接することができました。

④ 自分の罪のためにも献げる

旧約の祭司は他人だけでなく自分の罪のためにも犠牲をささげました。

⑤ 神の召し

祭司職は自分で選ぶものではありません。

⑥ アロンの例

アロンも神によって任命されました。

⑦ 神による任命の重要性

祭司職は神の権威によって与えられる務めです。


2. キリストは神に任命された大祭司(5:5-10)

① 自ら栄誉を求めなかった

キリストも大祭司の栄誉をご自分で取られたのではありません。

② 神の御子

父なる神によって

「あなたはわたしの子」

と宣言されました。

③ メルキゼデクの系統

キリストはアロンではなく、メルキゼデクに似た永遠の祭司です。

④ 地上での祈り

イエスは地上において涙を流しながら祈られました。

⑤ 苦しみの経験

ゲッセマネの祈りを思わせる姿が描かれています。

⑥ 従順を学ばれた

主は苦しみの中で完全な従順を示されました。

⑦ 永遠の救いの源

キリストは従う者すべてにとって永遠の救いの源となりました。

⑧ 完全な大祭司

苦しみを経験されたことによって、救い主としての働きを完成されました。

キリストは罪なきお方でありながら、人間の苦しみを完全に理解しておられます。


3. 霊的な未熟さへの警告(5:11-14)

① 説明しにくい問題

著者はメルキゼデクについてさらに語ろうとします。

しかし読者の霊的状態がその妨げとなっていました。

② 理解が鈍くなった

彼らは成長すべき時期でありながら停滞していました。

③ 教師になるべき人々

本来なら他者を教えられるほど成熟しているはずでした。

④ 乳しか飲めない状態

まだ初歩的な真理しか理解できませんでした。

⑤ 成熟した信仰

成熟した人は正しいことと誤ったことを見分けられます。

⑥ 訓練された感覚

継続的な従順によって霊的判断力が養われます。

⑦ 成長への招き

著者は読者を霊的成熟へと招いています。

信仰は救われて終わりではなく、成長し続けるべきものです。


神学的意味

① キリストは完全な大祭司です

旧約の祭司は不完全でしたが、キリストは完全な祭司です。

② キリストは人間の弱さを理解されます

主は苦しみと試練を経験されました。

③ キリストの従順が救いをもたらしました

十字架に至る従順によって救いが完成しました。

④ 救いは永遠です

キリストは永遠の救いの源です。

⑤ 神が祭司職を与えられました

キリストの権威は父なる神から来ています。

⑥ 信徒は成熟を目指すべきです

霊的成長は神の願いです。

⑦ キリストとの関係

キリストは、

  • 完全な大祭司
  • 永遠の救い主
  • 苦しみを知る仲介者
  • 従順の模範

です。

へブル5章は、キリストが神によって任命された完全な大祭司であり、苦しみを通して私たちの救いを完成されたことを教えています。


この箇所が私たちに語ること

① キリストは私たちを理解しておられる

私たちは苦しみや試練の中で、「誰もこの気持ちを分かってくれない」と感じることがあります。

しかしイエスは涙を流し、苦しみ、祈られたお方です。

主は私たちの弱さを深く理解してくださいます。

② 従順は苦しみの中で育まれる

イエスでさえ苦しみの中で従順を示されました。

私たちも試練を通して神を信頼することを学びます。

③ 救いは完全にキリストにある

キリストは永遠の救いの源です。

私たちは自分の努力ではなく、主の完成された御業に信頼することができます。

④ 信仰に成長が必要

へブル書の読者は成長が停滞していました。

私たちも現状に満足せず、神のことばを学び続けるよう招かれています。

⑤ 神のことばを深く学ぶ

成熟した信徒は善悪を見分ける力を持ちます。

そのためには聖書を継続して学び、実践することが必要です。

⑥ 訓練によって霊的感覚が養われる

霊的な判断力は一夜にして得られるものではありません。

神への従順を積み重ねる中で育てられます。

⑦ キリストに目を向け続ける

この章は、大祭司キリストの素晴らしさと、信徒の成熟への招きを結び付けています。

主を見上げることが成長の原動力です。


この章の中心メッセージ

イエス・キリストは神によって任命された完全な大祭司であり、苦しみを通して永遠の救いを完成されました。

また信徒はそのキリストに信頼しながら、霊的に成熟し続けるよう召されています。

へブル5章は、苦しみを知る大祭司キリストの慰めと、信仰の成長への招きを教えています。

「キリストは、ご自分に従うすべての人に対して、永遠の救いの源となられました。」(へブル5:9)