出エジプト記2章 モーセ誕生

モーセ誕生

モーセはレビ族から生まれてきます。
これは意外と重要な情報で、レビ族は後に祭司の一族となることから、モーセは祭司という立ち位置にいた人だったということがわかります。
祭司というのは、神さまと人との間にいて、宗教的なことに携る人です。
初めて聖書を読む人には読み取れないことなので、書いておきますね。

さて、イスラエル人は男の子が生まれたら殺さなければならないという命令が出ていました。
何とかその事実を隠そうと3か月粘りますが、泣き声が大きくなってきて、もう限界です。
モーセの両親はパピルスで編んだ籠にモーセを乗せて、ナイル川に流すことになりました。
それをファラオの娘が拾い、モーセ(引き上げる)と名付け、育てることになる。
モーセの姉ミリアムがそれを見ていて、乳母として母親を紹介するという有名なエピソードですね。
ドラマチックなので、映画などでは必ず取り上げられる部分だと思います。

こうしてモーセは、最初の3年は母に育てられ、そこからはファラオの一族の中で十分な教育も受けながら育てられることになります。
そこに、神さまの計画のすごさが見えますよね。

モーセの失敗

さて、大人になったモーセは、王室で育てられますが、自分がイスラエル人であるというアイデンティティも持っています。
そんなモーセは、ある時イスラエル人が鞭を打たれているのを目撃します。
彼の中には、同胞を助けるという使命感が沸き上がってきました。

出エジプト 2:12 彼はあたりを見回し、だれもいないのを確かめると、そのエジプト人を打ち殺し、砂の中に埋めた。

モーセの中には、イスラエル人たちを解放したいという思いがすでにあったのだろうと思います。
もしかすると、ここからイスラエル人たちをまとめ、クーデターでも起こしてやろうとすら思っていたかもしれません。
しかし、肝心のイスラエル人たちはそうではありませんでした。

出エジプト 2:14 彼は言った。「だれがおまえを、指導者やさばき人として私たちの上に任命したのか。おまえは、あのエジプト人を殺したように、私も殺そうというのか。」そこでモーセは恐れて、きっとあのことが知られたのだと思った。

モーセがエジプト人を殺して埋めたという噂は、あっという間に広まってしまっていました。
せっかく助けたイスラエル人たちは、自分たちにこれ以上危害が加えられないための保身しか考えていなかったのです。
数百年におよぶ奴隷生活は、彼らを骨抜きにしてしまっていたようでした。
自分が捕らえられることを恐れたモーセは、エジプトを逃げ出します。
こうしてモーセは、40歳にして挫折を味わうことになりました。

ミデヤン

エジプトを逃げ出したモーセは、ミデヤンの地に入り、レウエル(イテロ)たちと出会い、7人いる娘の一人チッポラを妻として迎えます。

ミデヤン人というのは、サラが死んだあと、アブラハムが再婚したケトラとの間に授かった子どもの子孫たちです。
同じルーツを持っていたということですね。
イテロたちは、アブラハムの時代からの信仰を保っていたのかもしれません。

ここでモーセは子どもを授かりゲルショム(寄留者)と名付けます。
自分のアイデンティティは、ミデヤン人ではなく、イスラエル人だという思いを持っていたからです。

モーセはこのミデヤンの地で、40歳から80歳までの40年間を羊飼いとして過ごすことになります。
エリート人生から挫折し、田舎で牧畜暮らしをして、このまま埋もれてしまおうとしていたようです。

しかし、その背後で歴史は動いていました。
それまでのファラオが死んだことによって、次のファラオがエジプトを支配することになり、その強い支配の結果、イスラエルの人々は酷い扱いを受ける王になってしまったのです。

出エジプト 2:23 それから何年もたって、エジプトの王は死んだ。イスラエルの子らは重い労働にうめき、泣き叫んだ。重い労働による彼らの叫びは神に届いた。
2:24 神は彼らの嘆きを聞き、アブラハム、イサク、ヤコブとの契約を思い起こされた。
2:25 神はイスラエルの子らをご覧になった。神は彼らをみこころに留められた。

ここから、歴史は再び動き出します。