出エジプト記9章 十の災い③

目次

疫病、腫物、雹の災い

9章で取り上げられるのは、疫病、腫物、雹の災いですね。
この辺りは、割と同じようなことの繰り返しです。

モーセが「イスラエルを去らせよ」と言う。
ファラオが拒む。
災いが起こる。
ファラオが「イスラエルを去らせる」と言う。
災いが終わる。
ファラオの気が変わる。

この繰り返しです。
士師記の出来事もそうですが、人間の愚かさが表されているように感じますね。

十の災い

出エジプトのためには、どうして十の災いが起こる必要があったのでしょうか?
十の災いは、エジプトの神々との戦いでもあります。
それぞれの災いは、エジプト人たちが信じていた神々の無力さを教えるしるしでもありました。

僕たちの感覚だと、他の宗教にまで干渉しなくてもいいじゃないかと感じる部分もあるのですが、当時の社会では神々への信仰とその世界観が人々の価値観を縛っていましたから、とても重要なことでした。
この出来事は、イスラエルを救うための出来事でもあるのですが、同時にエジプト人たちへの説得でもあるのです。

1:ナイルの水が血に変わる(7:17~25)
2:かえる(8:2~14)
3:ぶよ(8:16~19)
4:あぶ(8:21~24)
5:家畜の疫病(9:2~7)
6:腫物(9:8~11)
7:雹(9:22~33)
8:いなご(10:4~15)
9:闇(10:21~23)
10:初子が死ぬ(11:1~12:30)

ここに挙げられたものは、すべてエジプト人たちが神々としてあがめていたものだったり、神々によって護られているエジプトが害を受けるはずのないものや、むしろ益をもたらしてくれるはずのものでした。
彼らが信じていた偶像が、こぞって彼らを苦しめるような事となったのです。
人々が偶像の無力さを思い知るのに、これほどの方法はなかったでしょう。

「この災いはこの神への挑戦」ということが必ずしも当てはまるわけではないですが、この災いの背後には、このような神々への信仰が隠されていたという参考として紹介しておきたいと思います。

ハピ:ナイルの神 (ナイルの水が血に変わる災い)

第一の災い、ナイル川の水が血になるというできごとは、エジプト人たちが信仰していたハピの否定です。

以下は、Wikipediaの解説です。
ハピ:ナイル川を神格化したナイル川そのものの化身である。水の主人、全ての魚と鳥の長と考えられた。

その姿は、顎に髭を生やし、垂れた乳房を持つ緑か青色の太った男の姿で表される。女性の胸は、豊饒性を表すと考えられている。またナイル川の北と南を表す2人の神と考えられ、2人で上下エジプトの統一のシンボルに植物を結びつけるサムタウイの儀式を行う姿で表されることもあった[1]。頭上には、パピルスあるいは、睡蓮の葉が描かれる。手には、供物が高く積み上げられた盆もしくは、水が流れ出る壷を持っている。上下ナイルを表す2本の植物または、2個の壷を持つ姿で表されることもある。

ヘケト:蛙の神 (蛙の災い)

ヘケト: 多産と復活を司るとされる。蛙そのものか蛙の顔をした女性の姿で表される。

元々、古代エジプトにおいて蛙は、その姿から胎児の象徴であり、また多くの卵を産むことから多産の象徴でもあった。オタマジャクシを描いた象形文字が大きな数である「十万」を意味した程である。多産と復活を司るとされる。蛙そのものか蛙の顔をした女性の姿で表される。

元々、古代エジプトにおいて蛙は、その姿から胎児の象徴であり、また多くの卵を産むことから多産の象徴でもあった。オタマジャクシを描いた象形文字が大きな数である「十万」を意味した程である。

ゲブ:大地の神 (ブヨ、アブの災い)

ゲブは他の神話にも登場するようですが、エジプト神話の中でも大地の神です。

祝福をもたらすはずの大地がブヨやアブを発生させたということが、エジプトの人々にとっては大きなショックとなっただろうと思います。

絵の中では、下にいるのがゲブ。

アピス:聖なる牛 (家畜の疫病の災い)

エジプト神話の創造神であるプタハの化身とされています。

 

 

 

 

 

イシス:医療の神 (腫物の災い)

イシス (Isis) は、エジプト神話の女神。 イシスはギリシア語であり、古代エジプトではアセトと呼ばれた。 ヘリオポリス神話では、ゲブとヌトの子供でオシリスの妹であり妻、セト、ネフティスの姉(セトの妹とされることもある)で九柱神の一柱。 またホルスの母。

 

ヌト:天空の女神 (雹の災い)

大地の神ゲブと対に出てくる天空の女神です。
絵の中では上にいるのがヌト、下にいるのがゲブ、間にいるのはシューという大気の神です。
ゲブとヌトは夫婦で、二人の間にはオシリス、イシス、セト、ネフティスという有名な神々が生まれています。

オシリス:神 (いなごの災い)

王冠をかぶり、体をミイラとして包帯で巻かれて王座に座る男性の姿で描かれます。

植物や農耕を司る神としての面があったようです。

 

 

 

 

ラー:太陽神 (闇の災い)

エジプト神話の中でも、最も重要とされる神ですね。

ファラオは、神々の子孫とされ、「ラーの息子」と捉えられます。

そのラーが司る太陽が隠れてしまうことは一大事でした。