詩篇 138篇 心を尽くして感謝する(138:1-8)

背景

① ダビデによる感謝の詩篇

  • 表題には「ダビデによる」と記されている。
  • 詩篇138篇は、神が祈りに答えてくださったことへの感謝を歌う賛美の詩篇である。
  • 詩篇138~145篇はダビデの詩篇群としてまとめられており、神の真実と恵みが繰り返し賛美される。

② 感謝から始まる詩篇

この詩篇は、

「私は心を尽くしてあなたに感謝します。」

という告白から始まる。

ここでは、

  • 形式的な礼拝ではなく
  • 全人格的な感謝
  • 深い信頼から出る礼拝

が描かれている。

③ 個人から世界へ

詩篇の流れは、

  • 個人的感謝
  • 祈りへの応答
  • 諸王の礼拝
  • 神の守り

へと広がっていく。

④ 詩篇の主題

「神は祈りに応え、へりくだる者を顧み、その恵みを最後まで完成してくださる。」

ということである。

補足:

詩篇136篇が神の慈しみを繰り返し賛美したなら、138篇はその慈しみを実際に経験した者の感謝の歌となっている。


1. 心を尽くして感謝する(138:1-3)

① 全心からの感謝

「私は心を尽くしてあなたに感謝します。」

  • 礼拝の中心は心である。
  • 神への真実な応答である。
  • 神への愛の表現である。

② 神々の前で賛美する

「私は神々の前であなたをほめ歌います。」

  • 偶像に対する勝利宣言。
  • 主だけが礼拝に値する方である。
  • 神の栄光を公に告白する。

③ 神の御名を礼拝する

「あなたの聖なる宮に向かってひれ伏します。」

  • 神の臨在を慕う。
  • 神の御名をあがめる。
  • 神への畏れを表す。

④ 恵みとまことへの賛美

「あなたの恵みとまことのゆえに。」

  • 神の慈しみ。
  • 神の真実。
  • 神の契約への忠実さ。

が感謝の理由となっている。

⑤ 祈りへの応答

「私が呼び求めた日にあなたは私に答えられました。」

  • 神は祈りを聞かれる。
  • 神は応えてくださる。
  • 神は信仰者を強められる。

⑥ 内なる力

「私のたましいに力を与えてくださいました。」

  • 外的状況だけではない。
  • 内面的強さを与えられる。
  • 信仰を支えてくださる。

補足:

詩篇34篇や40篇と同じく、祈りに答えてくださった神への感謝が中心にある。


2. 諸王も主を賛美する(138:4-6)

① 世界的礼拝

「地のすべての王はあなたに感謝するでしょう。」

  • 神の栄光はイスラエルを超える。
  • 万国へ広がる。
  • 全世界が主を知るようになる。

② 神のことばの力

「彼らがあなたの御口のことばを聞くからです。」

  • 神のことばは力を持つ。
  • 神のことばは人を変える。
  • 神のことばは諸国を招く。

③ 神の道を歌う

「彼らは主の道について歌うでしょう。」

  • 神の救いを喜ぶ。
  • 神の導きを賛美する。
  • 神の王国を認める。

④ 主の栄光

「主の栄光は大きい。」

  • 神は比類なき方である。
  • 神はすべてにまさる。
  • 神は礼拝に値する。

⑤ 高くあっても低い者を見る神

「主は高くあっても低い者をご覧になります。」

  • 神はへりくだる者を顧みる。
  • 弱い者を忘れない。
  • 苦しむ者を見捨てない。

⑥ 高ぶる者を遠くから知る

「高ぶる者を遠くから知られます。」

  • 神は傲慢を退けられる。
  • 神はへりくだりを喜ばれる。
  • 神は心をご覧になる。

補足:

詩篇131篇の謙遜、詩篇99篇の聖なる王としての神の姿と深く結び付いている。


3. 主は私を守り抜かれる(138:7-8)

① 苦難の中を歩む信仰

「たとえ私が苦難の中を歩いても。」

  • 試練は存在する。
  • 困難は避けられない。
  • 信仰者も苦しみを経験する。

② 命を保たれる神

「あなたは私を生かされます。」

  • 神が守られる。
  • 神が支えられる。
  • 神が回復を与えられる。

③ 神の右の手

「あなたの右の手が私を救います。」

  • 神の力。
  • 神の勝利。
  • 神の救い。

を意味する。

④ 有名な告白

「主は私に関わることを成し遂げてくださいます。」

  • 神の計画は途中で終わらない。
  • 神の働きは完成される。
  • 神は最後まで導かれる。

⑤ 永遠の恵み

「主よ、あなたの恵みはとこしえまで。」

  • 神の愛は変わらない。
  • 神の契約は変わらない。
  • 神の真実は永遠である。

⑥ 最後の祈り

「御手のわざを捨てないでください。」

  • 私を見捨てないでください。
  • 導きを続けてください。
  • 完成まで守ってください。

という信仰の祈りである。

補足:

ここにはピリピ1:6の

「あなたがたのうちに良い働きを始められた方は、それを完成してくださる」

という新約の希望にも通じる信仰が見られる。


神学的意味

① 感謝は信仰の自然な応答である

  • 神の恵みを認める。
  • 神の真実を喜ぶ。
  • 神を礼拝する。

② 神は祈りに答えられる

  • 神は聞いておられる。
  • 神は力を与えられる。
  • 神は支えてくださる。

③ 神はへりくだる者を顧みられる

  • 高ぶる者を退けられる。
  • 謙遜な者を高くされる。
  • 弱い者を守られる。

④ 神の働きは完成する

  • 神は途中で見捨てない。
  • 神は導きをやめない。
  • 神の恵みは永遠である。

⑤ キリストとの関係

キリストにおいて、

  • 神の恵みとまことは完全に現された。
  • 祈りへの応答の道が開かれた。
  • 神の救いの計画は完成へ向かっている。

この詩篇は、キリストにある信仰者の確信を力強く支える。


まとめ

  • 詩篇138篇はダビデによる感謝の詩篇である。
  • 詩人は心を尽くして神に感謝する。
  • 神は祈りに答え、内なる力を与えてくださった。
  • 諸王もやがて主を礼拝する。
  • 主は高くあってもへりくだる者を顧みられる。
  • 苦難の中でも神は守り続けられる。
  • 「主は私に関わることを成し遂げてくださる」という確信が語られる。
  • 最後は神の永遠の恵みへの信頼で締めくくられる。
  • この詩篇は、**「神は祈りに答え、へりくだる者を顧み、ご自身が始められた働きを最後まで完成してくださる。そのゆえ信仰者は心を尽くして神に感謝することができる」**という神学的教訓を示している。