詩篇 111篇 主の御業をほめたたえる(111:1-10)
背景
① ハレルヤで始まる賛美の詩篇
- 詩篇111篇は「ハレルヤ」で始まる賛美の詩篇である。
- 作者名は記されていないが、神の偉大な御業を覚え、その真実を賛美することが主題となっている。
- 詩篇112篇と対をなす詩篇である。
② アクロスティック詩篇
- ヘブル語のアルファベット順に構成されたアクロスティック(折句)詩篇である。
- これは神への賛美が完全であることを象徴している。
- 詩篇145篇と同様に、神の栄光を最初から最後まで語ろうとしている。
③ 主への賛美から知恵へ
この詩篇は、
- 神の御業への賛美
- 神の契約への感謝
- 神の真実の確認
- 主を畏れる知恵
へと進んでいく。
④ 詩篇の主題
「神の御業を深く思い巡らす者は、神の真実と恵みを知り、真の知恵へ導かれる。」
ということである。
補足:
詩篇110篇がメシアなる王を歌ったなら、111篇はその王である神ご自身の偉大な御業を賛美する詩篇である。
1. 心を尽くして主をほめたたえる(111:1)
① ハレルヤ
「ハレルヤ。」
- 「主をほめたたえよ」という意味である。
- この詩篇全体の調子を決定する言葉である。
- 賛美への招きである。
② 心を尽くした礼拝
「私は心を尽くして主に感謝する。」
- 形式だけではない。
- 全人格的な礼拝である。
- 真心からの賛美である。
③ 神の民の集まり
「正しい人々の集いで。」
- 個人礼拝だけではない。
- 共同体礼拝でもある。
- 共に神を賛美する喜びが描かれる。
④ 感謝の人生
- 神の恵みを覚える。
- 神の働きを語る。
- 神を礼拝する。
これが信仰者の姿である。
補足:
詩篇138篇の「私は心を尽くしてあなたに感謝します」という告白を思わせる。
2. 主の御業は偉大である(111:2-4)
① 偉大な御業
「主のみわざは大きい。」
- 創造の御業。
- 出エジプトの救い。
- 契約の歴史。
すべてが含まれている。
② 思い巡らす信仰
「これを喜ぶ者はみな、それを深く究める。」
- 神の御業を学ぶ。
- 神の真実を考える。
- 神について知ろうとする。
ことが勧められている。
③ 栄光と威厳
「そのみわざは栄光と威厳に満ち。」
- 神の偉大さ。
- 神の美しさ。
- 神の完全さ。
を表している。
④ 記念される御業
「主はその奇しいみわざを記念とされた。」
- 神は忘れられない。
- 神の救いは語り継がれる。
- 神の恵みは世代を超える。
⑤ 恵み深くあわれみ深い神
「主は情け深く、あわれみ深い。」
- 出エジプト記34:6の神の自己紹介を思わせる。
- 神の性質そのものが賛美されている。
補足:
詩篇103篇や145篇でも同じ神の憐れみが賛美されている。
3. 契約を忘れない神(111:5-6)
① 主を畏れる者への備え
「主はご自分を畏れる者に食べ物を与え。」
- 神は養ってくださる。
- 神は必要を満たされる。
- 神は守られる。
② 契約の記憶
「その契約をとこしえに覚えておられる。」
- 神は約束を忘れられない。
- 神は真実である。
- 神は契約に忠実である。
③ 力ある御業
「ご自分の民に御業の力を示された。」
- 出エジプト。
- 約束の地。
- 神の導き。
などを思わせる。
④ 相続地の賜物
「諸国のゆずりを与えることによって。」
- 神の約束の成就。
- 神の主権。
- 神の忠実さ。
が示されている。
補足:
詩篇105篇に描かれる契約の歴史と深く結び付いている。
4. 主のことばは真実である(111:7-8)
① 御手の業
「その御手のわざは真実と公正。」
- 神に偽りはない。
- 神は正しい。
- 神は公平である。
② 信頼できる戒め
「そのすべての戒めは確かである。」
- 神のことばは揺るがない。
- 神の命令は正しい。
- 神の教えは信頼できる。
③ 永遠の真理
「それらはとこしえまでも確かに立つ。」
- 時代が変わっても変わらない。
- 神の真理は永遠である。
- 神の約束は朽ちない。
④ 真実と正しさ
「真実と正しさをもって行われた。」
- 神は完全に正しい。
- 神は完全に真実である。
- 神の行動に誤りはない。
補足:
詩篇19篇、119篇の神のことばへの賛美と共通している。
5. 主を畏れることは知恵の初め(111:9-10)
① 救いを送られる神
「主はご自分の民に贖いを送られた。」
- 神は救い主である。
- 神は解放者である。
- 神は回復を与えられる。
② 永遠の契約
「ご自分の契約を永遠に定められた。」
- 神の約束は永遠である。
- 神の愛は変わらない。
- 神の契約は続く。
③ 聖なる御名
「その御名は聖であり、おそれ多い。」
- 神は聖なる方である。
- 神は礼拝に値する。
- 神は畏れ敬われるべき方である。
④ 有名な結論
「主を畏れることは知恵の初め。」
- 真の知恵は神から始まる。
- 神を抜きにした知恵は不完全である。
- 神を知ることが人生の土台である。
⑤ 良い悟り
「それを行う者は皆、良い悟りを得る。」
- 知識だけではない。
- 従順が伴う。
- 実践による知恵である。
⑥ 永遠の賛美
「主への賛美は永遠に立つ。」
- 神は永遠に賛美される。
- 神の栄光は尽きない。
- 礼拝は終わらない。
補足:
箴言1:7の
「主を恐れることは知識の初めである」
と同じ知恵文学の中心思想がここに置かれている。
神学的意味
① 神の御業は学ぶ価値がある
- 創造を学ぶ。
- 救いの歴史を学ぶ。
- 神の真実を知る。
② 神は契約に忠実である
- 神は約束を守られる。
- 神は忘れられない。
- 神は真実なお方である。
③ 神のことばは永遠に確かである
- 時代が変わっても変わらない。
- 人の言葉とは異なる。
- 完全に信頼できる。
④ 真の知恵は神を畏れることから始まる
- 知識の量ではない。
- 神との関係である。
- 神への従順である。
⑤ キリストとの関係
新約聖書においてキリストは、
- 神の究極の御業
- 契約の完成
- 神の知恵そのもの
として示される。
キリストを知ることによって、人は真の知恵と救いを得る。
まとめ
- 詩篇111篇は神の御業を賛美するアクロスティック詩篇である。
- 神の偉大な御業は深く思い巡らされるべきである。
- 主は恵み深く憐れみに富んでおられる。
- 神は契約を永遠に覚えておられる。
- 神のことばは真実であり確かである。
- 主はご自身の民に救いを送られる。
- 「主を畏れることは知恵の初め」である。
- 最後は神への永遠の賛美で締めくくられる。
- この詩篇は、**「神の御業とことばを深く知ることによって、人は神の真実を学び、主を畏れる知恵へ導かれる」**という神学的教訓を示している。

