詩篇 112篇 主を恐れる者の幸い(112:1-10)
背景
① 詩篇111篇と対になっている詩篇
- 詩篇112篇は「ハレルヤ」で始まる賛美の詩篇である。
- 詩篇111篇と同じく、ヘブル語のアルファベット順に構成されたアクロスティック詩篇である。
- 詩篇111篇が「神のすばらしさ」を歌うのに対して、112篇は「神を恐れる人の幸い」を歌っている。
② 神から人へ焦点が移る
詩篇111篇では、
- 神の御業
- 神の真実
- 神の契約
が中心であった。
しかし112篇では、
- 神を恐れる者
- 神に従う者
- 義人の人生
が描かれる。
③ 知恵文学との共通点
この詩篇は箴言にもよく似ている。
特に、
「主を恐れること」
が祝福された人生の出発点として示されている。
④ 詩篇の主題
「主を恐れて歩む者は、神の祝福の中で揺るがない人生を送ることができる。」
ということである。
補足:
詩篇111篇の最後は、
「主を恐れることは知恵の初め」
で終わった。
112篇はその知恵ある人がどのような人生を送るかを描いている。
1. 主を恐れる者の幸い(112:1-2)
① ハレルヤ
「ハレルヤ。」
- 賛美への招きである。
- 神を礼拝する喜びから始まる。
- 幸いな人生の源が神であることを示している。
② 幸いな人
「幸いなことよ、主を恐れる人。」
- 神を敬う。
- 神を信頼する。
- 神を第一とする。
そのような人が祝福される。
③ 神の命令を喜ぶ
「その命令を大いに喜ぶ人。」
- 義務ではない。
- 神のことばを愛する。
- 神の御心を喜ぶ。
という姿である。
④ 子孫への祝福
「その子孫は地で力強くなる。」
- 神の祝福が次世代へ及ぶ。
- 神の恵みは家庭に流れる。
- 神を恐れる信仰は受け継がれていく。
⑤ 正しい人の世代
「直ぐな人々の世代は祝福される。」
- 神は義人を顧みられる。
- 神は忠実な者を忘れられない。
- 神の恵みは続いていく。
補足:
詩篇127篇や128篇に見られる家庭の祝福と共通する内容である。
2. 義人の祝福された生活(112:3-4)
① 神の豊かな祝福
「富と財宝がその家にあり。」
- 神の養いを表している。
- 神の恵みの豊かさを示している。
- 必ずしも物質的成功だけを意味するのではない。
② 永続する義
「その義は永遠に立つ。」
- 神との関係は続く。
- 神の評価は変わらない。
- 義なる歩みは無駄にならない。
③ 暗闇の中の光
「直ぐな人には暗闇の中に光が昇る。」
- 苦難はある。
- 試練もある。
- しかし神は希望を与えられる。
④ 神に似た性質
「その人は情け深く、あわれみ深く、正しい。」
神を恐れる者は、
- 神の憐れみ
- 神の慈しみ
- 神の正しさ
を反映するようになる。
補足:
詩篇111篇で語られた神の性質が、ここでは信仰者の生き方に現れている。
3. 揺るがない人(112:5-8)
① 恵み深い人
「情け深く施しをする人。」
- 他者を助ける。
- 分かち合う。
- 愛を実践する。
人である。
② 正しい判断
「公正をもって事を行う。」
- 神の知恵がある。
- 神の価値観に従う。
- 誠実に歩む。
③ 動じない人生
「その人は決して揺るがされない。」
- 状況によらない。
- 神への信頼に立っている。
- 神が支えられる。
④ 良い知らせを恐れない
「悪い知らせを恐れない。」
- 問題が来ないという意味ではない。
- 神への信頼が恐れに勝るのである。
⑤ 堅く立つ心
「その心は堅く立ち、主に拠り頼む。」
- 信仰の安定。
- 心の平安。
- 神への信頼。
が語られる。
⑥ 勝利を見る
「その心は動じない。」
- 神が共におられる。
- 神が守られる。
- 神が最後に勝利を与えられる。
補足:
詩篇62篇の「私のたましいはただ神を待ち望む」と非常によく似た信仰である。
4. 義人と悪人の対照(112:9-10)
① 惜しみなく与える人
「彼は貧しい人に施した。」
- 神の愛を実践している。
- 神の祝福を分かち合う。
- 神の慈しみを現す。
② 永続する義
「その義は永遠に立つ。」
- 再び強調される。
- 神は義人を忘れられない。
- その歩みは神に覚えられている。
③ 栄誉を受ける
「その角は栄光のうちに上げられる。」
- 神が高くしてくださる。
- 神が認めてくださる。
- 神が報いてくださる。
④ 悪人の反応
「悪者は見て憤る。」
- 義人の祝福を快く思わない。
- 神の恵みを理解できない。
- 嫉妬する。
⑤ 最後の結末
「悪者の願いは滅び失せる。」
- 神が最終的に裁かれる。
- 神の義が勝利する。
- 神を恐れる者が祝福される。
補足:
詩篇1篇の義人と悪人の対照が、この詩篇でも明確に描かれている。
神学的意味
① 主を恐れることが祝福の出発点である
- 神を敬う。
- 神を信頼する。
- 神に従う。
これが真の幸いである。
② 義人は神の性質を反映する
- 憐れみ深い。
- あわれみ深い。
- 正しい。
神との交わりが人格に現れる。
③ 神への信頼は恐れに勝つ
- 悪い知らせが来ても。
- 苦難が来ても。
- 神が支えてくださる。
④ 義人の人生は揺るがない
- 状況ではなく神に立つ。
- 神が守られる。
- 神が最後まで導かれる。
⑤ キリストとの関係
キリストは、
- 完全に神を恐れられた方
- 完全に義なる方
- 憐れみと真実に満ちた方
である。
信仰者はキリストにあって、この詩篇が描く義人の姿へと成長していく。
まとめ
- 詩篇112篇は主を恐れる者の幸いを歌う詩篇である。
- 主を恐れることが祝福の出発点である。
- 神のことばを喜ぶ者は幸いである。
- その祝福は家庭や次世代へも及ぶ。
- 義人は暗闇の中でも光を受ける。
- 神への信頼によって悪い知らせを恐れない。
- 憐れみ深く人々に仕える人生を送る。
- 義人は揺るがず、悪人の道は滅びる。
- この詩篇は、**「主を恐れ、神のことばを喜びとする者は、神の祝福と守りの中で揺るがない人生を歩むことができる」**という神学的教訓を示している。

