詩篇 113篇 低い者を高くされる神 (113:1-9)
背景
① ハレルヤ詩篇の始まり
- 詩篇113篇は「ハレルヤ」で始まり、「ハレルヤ」で終わる賛美の詩篇である。
- 詩篇113篇から118篇までは「エジプトのハレル」と呼ばれ、ユダヤ人の過越祭などで歌われた。
- 神の救いと恵みを記念する礼拝の歌として用いられた。
② 高くおられる神と低い者への恵み
この詩篇の最大の特徴は、
- 天に高くおられる神
- 塵の中にいる人
が対比されていることである。
神は無限に高いお方でありながら、
「低い者を顧みられる方」
として描かれている。
③ 王なる神のへりくだり
神は、
- 全世界を治める王である。
- 天を超えて高くおられる。
- それでも苦しむ者に目を留められる。
という驚くべき姿が歌われている。
④ 詩篇の主題
「主は最も高いお方でありながら、最も低い者を顧み、引き上げられる。」
ということである。
補足:
詩篇111篇が神の御業を賛美し、112篇が神を恐れる者の幸いを歌ったなら、113篇はその神の憐れみ深い御性質を賛美している。
1. 主の御名をほめたたえよ (113:1-3)
① ハレルヤ
「ハレルヤ。」
- 主をほめたたえよ。
- 主を賛美せよ。
- 主の御名をあがめよ。
という礼拝への招きである。
② しもべたちへの呼びかけ
「主のしもべたちよ、ほめたたえよ。」
- 神の民への招き。
- 礼拝者への招き。
- 神に仕える者への招き。
である。
③ 御名への賛美
「主の御名をほめたたえよ。」
- 神ご自身を賛美する。
- 神の御性質を賛美する。
- 神の栄光をたたえる。
④ 永遠の賛美
「今よりとこしえまで。」
- 一時的な礼拝ではない。
- 永続する賛美である。
- 神は永遠に礼拝されるべき方である。
⑤ 全世界の賛美
「日の昇るところから沈むところまで。」
- 東から西まで。
- 全世界で。
- すべての民族によって。
神の御名があがめられるべきである。
補足:
詩篇145篇の「すべての肉なる者が主をほめたたえる」と同じ普遍的な礼拝が描かれている。
2. 比類なき王なる神 (113:4-6)
① 国々を超える主
「主はすべての国々の上に高く。」
- 神の支配は全世界に及ぶ。
- 神はすべての王にまさる。
- 神は唯一の主である。
② 天を超える栄光
「その栄光は天の上にある。」
- 神の栄光は無限である。
- 神の威光は測れない。
- 神の偉大さは尽きない。
③ 有名な問い
「だれが私たちの神、主のようであろうか。」
- 比較できる存在はいない。
- 神は唯一である。
- 神は比類なき方である。
④ 高い所に座する神
「高い所に座し。」
- 王座に着いておられる。
- 全宇宙を治めておられる。
- 主権を持っておられる。
⑤ 低い所を見られる神
「天と地を見下ろされる。」
- 神は高くおられる。
- しかし世界を顧みられる。
- 被造物に無関心ではない。
補足:
イザヤ57:15も、高く聖なる方が砕かれた者と共におられることを教えている。
3. 低い者を高くされる神 (113:7-9)
① 塵の中から引き上げる
「弱い者を塵から起こし。」
- 無力な者。
- 貧しい者。
- 忘れられた者。
を神は顧みられる。
② 灰の中から高くする
「貧しい者を灰の山から引き上げ。」
- 絶望から救う。
- 恥から回復させる。
- 新しい希望を与える。
③ 高い地位へ導く
「高貴な者たちとともに座らせる。」
- 神は人生を変えられる。
- 神は回復を与えられる。
- 神は名誉を与えられる。
④ 不妊の女への祝福
「子どものいない女を家に住まわせ。」
- 当時最大の悲しみの一つが不妊であった。
- 神はその嘆きを知っておられる。
- 神はその悲しみを変えることができる。
⑤ 喜びの母とされる
「子どもたちの喜ばしい母とされる。」
- 神は回復の神である。
- 神は希望を与えられる。
- 神は涙を喜びへ変えられる。
⑥ ハレルヤ
詩篇は再び、
「ハレルヤ」
で終わる。
低い者を顧みられる神を礼拝するためである。
補足:
サムエル記第一2章のハンナの賛歌には、この詩篇と非常によく似た思想が見られる。
神学的意味
① 神は比類なき方である
- 神に並ぶ者はいない。
- 神は全世界の王である。
- 神は永遠の主である。
② 神は低い者を顧みられる
- 貧しい者を忘れない。
- 弱い者を見捨てない。
- 苦しむ者を顧みられる。
③ 神は人生を変えることができる
- 塵から引き上げる。
- 絶望を希望に変える。
- 悲しみを喜びに変える。
④ 神の偉大さは憐れみに現れる
- 力だけではない。
- 支配だけでもない。
- 低い者への愛に神の栄光が現れる。
⑤ キリストとの関係
キリストは、
- 天から来られた王
- へりくだられた救い主
- 貧しい者や弱い者の友
である。
マリアの賛歌(ルカ1:46-55)にも、
「低い者を高くされる神」
という詩篇113篇の思想が強く反映されている。
まとめ
- 詩篇113篇はハレルヤで始まりハレルヤで終わる賛美の詩篇である。
- 神の御名は全世界で賛美されるべきである。
- 主はすべての国々の上に高くおられる。
- 神に比べられる存在はいない。
- しかし神は低い者を顧みられる。
- 貧しい者を引き上げ、回復を与えられる。
- 不妊の女を喜びの母とされる。
- この詩篇は、**「主は全宇宙を治める高き王である。しかし同時に、弱い者や見捨てられた者を深く顧み、恵みによって引き上げてくださる」**という神学的教訓を示している。

