詩篇 72篇 平和の王の統治 (72:1-20)
背景
① ソロモンによる王のための祈り
- 表題には
「ソロモンによる」
と記されている。
- ダビデの後を継ぐ王のための祈りとして読まれている。
- 同時に、この詩篇はソロモンを超える理想の王を描いている。
② メシア的王の詩篇
この詩篇には、
- 義による統治
- 全世界への支配
- 平和の実現
- 貧しい者の救い
が描かれている。
そのため古くから、
「来るべきメシアの王国」
を預言する詩篇として理解されてきた。
③ 第二巻の結び
- 詩篇72篇は詩篇第2巻(42~72篇)の最後に置かれている。
- 最後には、
「エッサイの子ダビデの祈りは終わった。」
という注記が付けられている。
④ 詩篇の主題
「神が立てられる理想の王は、義と平和によって治め、全世界に祝福をもたらす。」
ということである。
補足:
詩篇71篇が老年の信仰者の祈りであったなら、72篇は神の王国への壮大な希望を歌っている。
1. 義をもって治める王 (72:1-4)
① 王への祈り
「神よ、あなたの公正を王に与え。」
- 王が神のように支配するためではない。
- 神の正義を反映するためである。
- 神の心で統治するためである。
② 義なる統治
「あなたの民を義によって。」
- 公平な裁き。
- 正しい政治。
- 真実な統治。
が求められている。
③ 苦しむ者への配慮
「苦しむ民の子らを救い。」
- 弱者を守る。
- 貧しい者を顧みる。
- 不正な圧迫を取り除く。
王としての使命が語られる。
④ 平和の実現
「山々は平和をもたらす。」
- 戦争の終結。
- 社会の安定。
- 神の祝福。
を象徴している。
補足:
ここで描かれる王は単なる権力者ではなく、弱者の守護者として描かれている。
2. 全地に及ぶ平和の支配 (72:5-11)
① 永続する王国
「日があるかぎり。」
- 短期間ではない。
- 長く続く支配である。
- 永遠の王国を思わせる。
② 豊かな平和
「豊かな平和があるように。」
- ヘブル語の「シャローム」である。
- 戦争がないだけではない。
- 神との調和を意味する。
③ 雨のような王
「刈られた草地に降る雨のように。」
- 命を与える。
- 滋養を与える。
- 回復をもたらす。
王として描かれる。
④ 世界規模の統治
「海から海まで。」
- 国境を超える。
- 全世界に及ぶ。
- 普遍的な王権である。
⑤ 諸王の礼拝
「すべての王は彼にひれ伏し。」
- 王の王である。
- 世界の支配者である。
- 万国の礼拝を受ける。
補足:
ここはソロモンを超えて、終末的なメシア王国を見据えている。
3. 貧しい者を救う王 (72:12-14)
① 救いの理由
「助けを叫び求める貧しい者を救い。」
- 王権の目的は支配ではない。
- 救済である。
- 保護である。
② 弱者への憐れみ
「弱い者と乏しい者をあわれみ。」
- 神の心を表している。
- 義なる支配の中心である。
- 弱者が顧みられる。
③ 命を尊ぶ王
「彼らのいのちを救う。」
- 人間の尊厳を守る。
- 命を大切にする。
- 神の価値観を反映する。
④ 尊い命
「彼らの血は彼の目に尊い。」
- 神は苦しみを見ておられる。
- 神は不正を見逃されない。
- 神は弱い者を愛される。
補足:
詩篇113篇の「低い者を高くされる神」の思想が王の統治の中に現れている。
4. 祝福に満ちる王国 (72:15-17)
① 王への祝福
「彼が生きながらえるように。」
- 王国の繁栄。
- 王の長寿。
- 神の守り。
を願う祈りである。
② 豊かな実り
「山々の頂にも穀物が豊かに実るように。」
- 飢えがない。
- 豊かな収穫がある。
- 神の祝福が満ちる。
③ 人々の繁栄
「人々が草のように栄えるように。」
- 命があふれる。
- 社会が安定する。
- 神の恵みが広がる。
④ 永遠の名
「その名がとこしえに続くように。」
- 一時的王国ではない。
- 永遠の王国である。
- メシア的王国を示す。
⑤ 万国への祝福
「すべての国々が彼を幸いと呼ぶように。」
- アブラハム契約の成就。
- 万国祝福の実現。
- 神の救いの完成。
を示している。
補足:
創世記12章の「あなたによって地のすべての部族が祝福される」が背景にある。
5. 栄光を受ける神 (72:18-20)
① 神への賛美
「ほむべきかな、主なる神。」
- 最終的な栄光は神に帰される。
- 王ではない。
- 神ご自身である。
② 驚くべき御業
「ただひとり奇しいことを行う方。」
- 救いを与えられる。
- 王を立てられる。
- 歴史を導かれる。
③ 全地への栄光
「その栄光が全地に満ちるように。」
- 王国の目的である。
- 神の栄光の実現である。
- 万国礼拝の完成である。
④ アーメン
「アーメン、アーメン。」
- 確かな信頼。
- 礼拝の応答。
- 神への賛同。
⑤ 詩篇第二巻の結び
「エッサイの子ダビデの祈りは終わった。」
- 一つの区切りである。
- ダビデの希望の集大成である。
- 来たるべき王への期待である。
神学的意味
① 神の理想の王は義によって治める
- 公平である。
- 真実である。
- 弱者を守る。
② 真の平和は神から来る
- 人間の力だけではない。
- 神の支配によって実現する。
- 神の祝福によって保たれる。
③ 神の王国は全世界に及ぶ
- 国境を超える。
- 民族を超える。
- 万国を祝福する。
④ 神は貧しい者を顧みられる
- 苦しむ者を救われる。
- 弱い者を守られる。
- 正義を実現される。
⑤ キリストとの関係
この詩篇は旧約聖書を代表するメシア詩篇の一つである。
キリストは、
- 義なる王
- 平和の君
- 貧しい者の救い主
- 万国を治める王
として、この詩篇を完全に成就される。
また、
「すべての王は彼にひれ伏す」
という預言は、最終的にキリストの王国において完成する。
まとめ
- 詩篇72篇はソロモンによる王のための祈りである。
- 義と公正による統治が願われている。
- 王は弱者と貧しい者を救う。
- その支配は全世界に及ぶ。
- 平和と繁栄がもたらされる。
- 万国が祝福を受ける。
- 最後は神の栄光への賛美で締めくくられる。
- この詩篇は、**「神が立てられる理想の王は義と平和によって統治し、全世界に祝福をもたらす。究極的にはキリストこそこの平和の王である」**という神学的教訓を示している。

