詩篇 136篇 とこしえの慈しみ (136:1-26)
背景
① 「大ハレル」と呼ばれる詩篇
- 詩篇136篇は「大ハレル(偉大な賛美)」と呼ばれる詩篇である。
- ユダヤ人の礼拝において特別な位置を占めてきた。
- 神の救いの歴史を振り返りながら賛美する感謝の詩篇である。
② 繰り返される主題
この詩篇の最大の特徴は、
「その慈しみはとこしえまで」
という句が26回繰り返されることである。
- 神の愛は変わらない。
- 神の恵みは尽きない。
- 神の契約は永遠である。
という真理が強調されている。
③ 応唱形式の礼拝
古代イスラエルでは、
- 祭司が前半を朗読し、
- 会衆が「その慈しみはとこしえまで」と応答した
と考えられている。
④ 詩篇の主題
「神のすべての御業の背後には、とこしえに変わらない慈しみがある。」
ということである。
補足:
詩篇135篇が神の偉大さを賛美したなら、136篇はその偉大さの源が神の永遠の慈しみにあることを教えている。
1. 慈しみ深い神をほめたたえよ (136:1-3)
① 感謝の招き
「主に感謝せよ。」
- 礼拝への招きである。
- 感謝の出発点である。
- 神への賛美の呼びかけである。
② 主はまことに良い方
「主はまことにいつくしみ深い。」
- 神は善なる方である。
- 神は誠実である。
- 神は信頼に値する。
③ 神々の神
「神々の神に感謝せよ。」
- 主だけが真の神である。
- 偶像とは比較できない。
- 唯一の創造主である。
④ 主たちの主
「主たちの主に感謝せよ。」
- すべての権威を超える方。
- すべての支配者の上におられる方。
- 永遠の王である。
⑤ 慈しみの宣言
「その慈しみはとこしえまで。」
この言葉が詩篇全体の心臓部となる。
補足:
詩篇118篇でも「主の慈しみはとこしえまで」が中心テーマとして繰り返されていた。
2. 創造の御業と慈しみ (136:4-9)
① 奇しい御業
「ただひとり奇しいわざを行う方。」
- 創造主である。
- 救い主である。
- 全能の神である。
② 天を造られた
「英知をもって天を造られた。」
- 宇宙の秩序。
- 神の知恵。
- 神の設計。
を表す。
③ 地を据えられた
「地を水の上に敷かれた。」
- 神の創造の力。
- 被造世界の安定。
- 神の支配。
が描かれる。
④ 光を造られた
「大きな光を造られた。」
- 太陽
- 月
- 星
も神の創造物である。
⑤ 創造の目的
創造の背後には、
「その慈しみはとこしえまで」
がある。
つまり神は愛によって世界を造られたのである。
補足:
創世記1章の創造の記事を礼拝の視点から振り返っている。
3. 出エジプトの慈しみ (136:10-15)
① エジプトへの裁き
「エジプトのういごを打たれた方。」
- 神はご自身の民を守られた。
- 神は救いを実現された。
- 神は力を現された。
② イスラエルの解放
「イスラエルをその中から導き出された。」
- 奴隷状態からの解放。
- 契約の民の誕生。
- 神の救いの歴史。
である。
③ 力強い御手
「力強い御手と伸ばされた腕によって。」
- 神の全能性。
- 神の介入。
- 神の救出。
を示している。
④ 紅海の奇跡
「紅海を二つに裂かれた。」
- 神が道を開かれた。
- 神が敵を打ち破られた。
- 神が民を守られた。
⑤ 慈しみの理由
救いの歴史そのものが、
神の慈しみの証拠
である。
補足:
詩篇114篇が出エジプトを壮大に歌ったように、ここでも出エジプトが救いの中心として語られている。
4. 荒野と約束の地への導き (136:16-22)
① 荒野を導く神
「荒野を通して民を導かれた。」
- 神は途中で見捨てない。
- 神は旅路を支えられる。
- 神は最後まで導かれる。
② 強い王たちへの勝利
「大いなる王たちを打たれた。」
- 神が戦われた。
- 神が勝利を与えられた。
- 神が約束を守られた。
③ シホンとオグ
「アモリ人の王シホン。」
「バシャンの王オグ。」
- 約束の地への障害であった。
- 神によって打ち倒された。
- 神の力が示された。
④ 相続地の賜物
「その地をゆずりとして与えられた。」
- 神は約束を果たされる。
- 神は祝福を与えられる。
- 神は契約に忠実である。
⑤ 神の慈しみ
約束の地の獲得も、
「その慈しみはとこしえまで」
によるのである。
補足:
ここには出エジプトから約束の地までの歴史全体が凝縮されている。
5. 今日の私たちへの慈しみ (136:23-26)
① 私たちを覚えておられる神
「私たちが卑しめられていたとき。」
- 神は忘れられない。
- 神は見ておられる。
- 神は顧みられる。
② 救い出される神
「私たちを敵から救い出された。」
- 過去だけではない。
- 現在も働いておられる。
- 今も救われる。
③ すべてに食物を与える神
「生けるものすべてに食物を与える。」
- 神は養い主である。
- 神は支えられる。
- 神は必要を満たされる。
④ 最後の賛美
「天の神に感謝せよ。」
- 創造主への礼拝。
- 救い主への感謝。
- 養い主への賛美。
で締めくくられる。
⑤ 詩篇全体の結論
- 創造の背後にも。
- 出エジプトの背後にも。
- 荒野の旅の背後にも。
- 今の生活の背後にも。
「その慈しみはとこしえまで」
がある。
神学的意味
① 神の慈しみは永遠である
- 神の愛は終わらない。
- 神の恵みは尽きない。
- 神の約束は変わらない。
② 創造も救いも慈しみから生まれる
- 世界を造られた。
- 民を救われた。
- 今日も養われる。
すべて神の愛による。
③ 神は歴史を導かれる
- エジプトで。
- 荒野で。
- 約束の地で。
- 今も。
神は支配しておられる。
④ 感謝は信仰の基本である
- 神の御業を思い出す。
- 神の真実を数える。
- 神を賛美する。
⑤ キリストとの関係
キリストにおいて、
- 神の永遠の慈しみが完全に現された。
- 十字架において救いが完成した。
- 復活によって永遠の希望が与えられた。
詩篇136篇の
「その慈しみはとこしえまで」
は、キリストにおいて最も明らかに示されたのである。
まとめ
- 詩篇136篇は「その慈しみはとこしえまで」が26回繰り返される感謝の詩篇である。
- 神は創造主である。
- 神は出エジプトによって民を救われた。
- 神は荒野で導き、約束の地を与えられた。
- 神は今日もご自身の民を覚えておられる。
- 神はすべての必要を満たされる。
- 歴史全体が神の慈しみの証しである。
- この詩篇は、**「神のすべての御業の背後には、とこしえに変わらない慈しみがある。信仰者はその恵みを覚え、感謝と賛美をささげるよう招かれている」**という神学的教訓を示している。

