詩篇 146篇 人ではなく神に望みを置け (146:1-10)

背景

① ハレルヤ詩篇の始まり

  • 詩篇146篇から150篇までは、すべて「ハレルヤ」で始まり「ハレルヤ」で終わる。
  • 詩篇全体の締めくくりとなる賛美の詩篇群である。
  • 神の王権と忠実さを賛美し、人間ではなく神に信頼を置くよう勧めている。

② 信頼の対象を問う詩篇

この詩篇では、

  • 人間に頼ること
  • 神に頼ること

が鮮やかに対比されている。

詩人は、

「誰に希望を置くべきか」

という人生の根本的な問いに答えている。

③ 神の支配と恵み

後半では、

  • 創造主としての神
  • 弱者を支える神
  • 永遠に治める王なる神

が描かれている。

④ 詩篇の主題

「人間の力は限りがある。しかし主は永遠に生きておられ、信頼する者を支えてくださる。」

ということである。

補足:

詩篇145篇が永遠の王なる神を賛美したなら、146篇はその王なる神に信頼すべき理由を語っている。


1. 生涯を通して主を賛美する (146:1-2)

① ハレルヤ

「ハレルヤ。」

  • 主をほめたたえよ。
  • 主を賛美せよ。
  • 主を礼拝せよ。

という呼びかけである。

② 自分自身への命令

「わがたましいよ、主をほめたたえよ。」

  • 賛美は心から始まる。
  • 信仰者は自分自身に語りかける。
  • 神への礼拝を選び取る。

③ 生涯の賛美

「私は生きているかぎり主をほめたたえる。」

  • 一時的な賛美ではない。
  • 人生全体を通した礼拝である。
  • 神への忠実な応答である。

④ 命の限り賛美する

「いのちのある限り。」

  • 若い日も。
  • 老年の日も。
  • 最後の日まで。

神を賛美する決意が語られる。

補足:

詩篇71篇の「老年の日まで神を語る」という決意を思わせる。


2. 人に頼るな (146:3-4)

① 有名な警告

「君主たちに頼るな。」

  • 権力者に頼らない。
  • 人間に究極の希望を置かない。
  • 神を第一とする。

という勧めである。

② 人の限界

「救いのない人の子に。」

  • 人は有限である。
  • 人は完全ではない。
  • 人は救い主になれない。

③ 死による終わり

「その息が出て行くと。」

  • 人生は短い。
  • 人は死ぬ。
  • 権力も永遠ではない。

④ 人の計画の終わり

「その計画は滅び失せる。」

  • 人の計画には限界がある。
  • 地上の制度も永遠ではない。
  • 神だけが永遠である。

補足:

詩篇118篇の

「君主たちに頼るより主に身を避ける方がよい」

という言葉と深く結び付いている。


3. 幸いな人とはだれか (146:5-7)

① 幸いな人

「幸いなことよ。」

詩篇はここで真の幸いを定義する。

② ヤコブの神

「ヤコブの神を助けとする人。」

  • 契約の神である。
  • 忠実な神である。
  • 救いの神である。

③ 希望を置く人

「主に望みを置く人。」

  • 信頼する人。
  • 待ち望む人。
  • 神に依存する人。

が幸いである。

④ 創造主なる神

「天と地と海を造られた方。」

  • 全能の神である。
  • 創造主である。
  • すべてを支配される方である。

⑤ 真実を守る神

「真実をとこしえまでも守られる。」

  • 神は約束を守られる。
  • 神は変わられない。
  • 神は忠実である。

⑥ 弱い者の味方

「虐げられた者のためにさばきを行い。」

  • 正義を実現される。
  • 苦しむ者を顧みられる。
  • 神は弱者の味方である。

補足:

詩篇72篇の理想の王の働きが、ここでは神ご自身の働きとして描かれている。


4. 主が愛される人々 (146:8-9)

① 目を開く神

「主は盲人の目を開かれる。」

  • 光を与えられる。
  • 真理を示される。
  • 救いをもたらされる。

② 起こしてくださる神

「主はかがんでいる者を起こされる。」

  • 落胆した者。
  • 苦しむ者。
  • 重荷を負う者。

を支えられる。

③ 義人を愛される神

「主は正しい者を愛される。」

  • 神との関係を喜ばれる。
  • 信頼する者を守られる。
  • 愛を注がれる。

④ 寄留者を守る神

「主は寄留者を守られる。」

  • 社会的弱者を顧みられる。
  • 孤独な者を支えられる。
  • 忘れられた者を助けられる。

⑤ やもめとみなしご

「みなしごとやもめを支えられる。」

  • 神の憐れみが示される。
  • 神の公義が示される。
  • 神の愛が示される。

⑥ 悪人の道

「悪者の道を曲げられる。」

  • 神は悪を放置されない。
  • 神は裁かれる。
  • 神は義を立てられる。

補足:

旧約聖書全体を通して、やもめ・みなしご・寄留者は神の特別な保護の対象として描かれている。


5. 主は永遠に王である (146:10)

① 永遠の王権

「主はとこしえに統べ治められる。」

  • 人間の王国は終わる。
  • 神の王国は終わらない。
  • 神の支配は永遠である。

② シオンの神

「シオンよ、あなたの神は。」

  • 神はご自分の民の神である。
  • 神は契約を守られる。
  • 神は共におられる。

③ 世々限りなく

「代々に統べ治められる。」

  • 神は変わらない。
  • 神は衰えない。
  • 神は永遠に王である。

④ ハレルヤ

詩篇は再び、

「ハレルヤ。」

で終わる。

人ではなく神に望みを置く者の賛美で締めくくられる。


神学的意味

① 人間は究極の救い主ではない

  • 権力にも限界がある。
  • 富にも限界がある。
  • 人にも限界がある。

② 神だけが信頼に値する

  • 創造主である。
  • 永遠である。
  • 真実を守られる。

③ 神は弱い者を顧みられる

  • 貧しい者。
  • 寄留者。
  • やもめ。
  • みなしご。

を守られる。

④ 神の王国は永遠である

  • 地上の王国は終わる。
  • 神の支配は続く。
  • 神の救いは完成する。

⑤ キリストとの関係

イエス・キリストは、

  • 永遠の王
  • 良い牧者
  • 貧しい者の救い主

として来られた。

また福音書には、

「盲人の目を開き、虐げられた者を解放する」

主の姿が描かれており、この詩篇の約束を成就している。


まとめ

  • 詩篇146篇はハレルヤ詩篇の最初の詩篇である。
  • 生涯を通して神を賛美するよう招いている。
  • 人間や権力者に究極の希望を置いてはならない。
  • 真の幸いは主に望みを置くことである。
  • 神は創造主であり永遠に真実を守られる。
  • 神は弱い者や苦しむ者を顧みられる。
  • 主は永遠に王として統治される。
  • この詩篇は、**「人間ではなく永遠なる神に望みを置け。主は弱い者を支え、真実を守り、ご自身の民を永遠に治められる」**という神学的教訓を示している。