第一コリント 2章 御霊によって示される神の知恵(2:1-16)
背景
① 1章から続く「十字架の知恵」のテーマ
1章でパウロは、
- 人間の知恵
- 神の知恵
- 十字架の福音
を対比した。
2章ではさらに、「人はどのように神の知恵を理解するのか」という問題が扱われる。
② コリント人の知恵への憧れ
コリントの人々はギリシア文化の影響を受けていた。
そのため、
- 哲学
- 雄弁術
- 学問
- 論理
を高く評価していた。
しかしパウロは、福音は人間の知恵によって理解されるのではないと教える。
③ パウロの宣教姿勢
パウロはコリントで福音を語る際、
- 派手な弁論
- 哲学的技巧
- 印象的な話術
に頼らなかった。
彼が伝えたのは、「十字架につけられたキリスト」そのものであった。
④ 聖霊の働きの重要性
この章では、
- 聖霊による啓示
- 聖霊による理解
- 聖霊による識別
が中心的テーマとなる。
教会の問題の根底には、神の知恵を人間的な基準で測ろうとする姿勢があった。
パウロはその根本的な誤りを正そうとしている。
1. 十字架だけを宣べ伝えたパウロ(2:1-5)
① 雄弁を誇らなかった
パウロは、
「すぐれた言葉や知恵によってではなく」
福音を語ったと述べる。
- 修辞学によらない
- 哲学によらない
- 人間的説得によらない
宣教であった。
② 十字架につけられたキリスト
パウロは、
「イエス・キリスト、それも十字架につけられた方」
だけを知ることに決めていた。
福音の中心は、
- 奇跡ではない
- 哲学ではない
- 人間論でもない
キリストの十字架である。
③ 弱さの中での奉仕
パウロは、
- 弱さ
- 恐れ
- おののき
をもって仕えていた。
決して自己確信に満ちた英雄としてではなかった。
④ 聖霊の力による宣教
信仰の土台は、
- 人間の説得力ではなく
- 聖霊の働きであり
- 神の力である
と語られる。
福音の有効性は伝道者の能力ではなく、神の力にある。
これは教会の働き全体に適用される重要な原則である。
2. 神の奥義としての知恵(2:6-10)
① 神の知恵は存在する
パウロは、キリスト者が知恵を持たないと言っているのではない。
むしろ、「成熟した者たちの間では知恵を語る」と言う。
② 世の知恵ではない
その知恵は、
- この世のものではなく
- 支配者たちのものでもなく
- 人間から生じたものでもない
神から来る知恵である。
③ 隠されていた奥義
神の知恵は、
「奥義として隠されていた」
ものであった。
それは神が永遠の昔から計画しておられた救いである。
④ 十字架を理解できなかった支配者たち
もし世の支配者たちが神の知恵を理解していたなら、主を十字架につけることはなかった。
しかし彼らは神の計画を理解できなかった。
⑤ 聖霊による啓示
神の深い計画は、聖霊によって示される。
- 人間の観察では分からない
- 人間の推論でも分からない
- 神が示して初めて理解できる
のである。
「奥義」とは秘密そのものではなく、かつて隠されていたが今やキリストにおいて明らかにされた神の救済計画を意味する。
3. 聖霊は神の深みを知っておられる(2:11-13)
① 人の心を知る者
人の思いを本当に知っているのは、その人の内にいる霊だけである。
② 神の心を知る聖霊
同じように、神の深い御心を知っておられるのは聖霊だけである。
- 御父を知る方
- 神の御計画を知る方
- 神の知恵を知る方
だからである。
③ 聖霊を受けた信徒
信徒は、この世の霊ではなく、神から来る御霊を受けている。
④ 御霊によって語る
パウロは、人間の知恵の言葉ではなく、御霊によって教えられた言葉を用いて福音を語る。
聖霊は単なる力ではない。
神の御心を明らかにし、信徒を真理へ導く人格的なお方である。
4. 御霊の人と生まれながらの人(2:14-16)
① 生まれながらの人
生まれながらの人は、神の御霊のことを受け入れない。
なぜなら、それらは愚かに見えるからである。
② 霊的な理解
神の真理は、霊的に discern(識別)される。
つまり聖霊の働きがなければ、その本質は理解できない。
③ 御霊の人
御霊の人は、神の真理を識別できるようになる。
これは完全無欠になることを意味しない。
聖霊によって神の視点を学び始めるということである。
④ キリストの心
この章は有名な言葉で終わる。
「私たちはキリストの心を持っています。」
信徒は聖霊によって、
- キリストの価値観
- キリストの判断
- キリストの思い
を学ぶ者とされる。
ここでいう「キリストの心」とは、全知になるという意味ではなく、十字架を中心とするキリストの視点に生きることを意味している。
神学的意味
① 福音の中心は十字架である
- 知識ではなく
- 哲学ではなく
- 十字架のキリストである
② 信仰は神の力に基づく
- 人間の説得力によらず
- 聖霊の働きにより
- 神の力によって生まれる
③ 神の知恵は人間の知恵を超えている
- 人の予想を超え
- 人の論理を超え
- 人の誇りを砕く
知恵である。
④ 聖霊は神の真理を明らかにされる
- 神の御心を示し
- 神の言葉を悟らせ
- 神の計画を理解させる
働きを担われる。
⑤ 信徒はキリストの心を持つ
- 自己中心から解放され
- 十字架中心に生き
- 神の視点を学ぶ
者とされている。
⑥ キリストとの関係
キリストは、
- 神の知恵そのもの
- 十字架につけられた救い主
- 神の奥義の中心
- 聖霊によって示される主
である。
聖霊は信徒をキリストへ導き、キリストの思いにあずからせてくださる。
まとめ
- 第一コリント2章は神の知恵と聖霊の働きを扱う章である。
- パウロは十字架のキリストだけを宣べ伝えた。
- 福音の力は人間の雄弁さではなく神の力にある。
- 神の救いの計画は奥義として備えられていた。
- 聖霊は神の深い御心を知っておられる。
- 信徒は聖霊によって神の真理を理解する。
- 生まれながらの人は神の真理を受け入れない。
- 御霊の人は神の視点を学ぶことができる。
- 信徒には「キリストの心」が与えられている。
「神の知恵は十字架において現され、その知恵は聖霊によってのみ真に理解される。信徒は御霊によってキリストの心を持ち、神の視点に生きる者とされている」

